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2009年7月

ケネディが示すターゲット・マンの重要性

2009/07/30(木)

2009年7月29日:土曜日、ジメジメした気候のなか、長く、曲がりくねった道のりを埼玉スタジアム2002まで歩かなければならなかったが、その苦労に報いるのに十分なプレーを、グランパスに入団したジョシュア・ケネディは見せてくれた。この大男は観る者を失望させず、レッズのディフェンス陣を混乱に陥れ、レッズ・ゴールでの山岸のひどいミスのおかげで自らもゴールを記録した。

雲をつくような長身のターゲット・マンたちは、その高さゆえに言われなき非難のターゲットになることが往々にしてある。「走れない。ボール・コントロールができない。パスの組み立てに加わることができない。ヘディングしかできない」といった具合に。しかし、そういった理由だけで長身選手をあっさり見限ってしまうサッカー通は愚かというほかはない。たとえば、イングランド代表でのピーター・クラウチの働きを見ればいい。

話を戻すと、ケネディ獲得はグランパスにとって大きな意味を持っている。彼は自チームのディフェンダーにとっては格好の目印になり、相手ディフェンダーにとっては確実に災厄の種となるからだ。
グランパスがプレッシャーをかけられていても、阿部が左足を一閃させて50メートルのパスを出すだけで、プレッシャーが緩和される。さらに攻撃の際、ボールの出しどころに困ったらペナルティエリアにボールを放り込み、すべてを任せればいいのだ。土曜日、マギヌンがまったくその通りのことをし、ケネディが残りの仕事を引き受けた。ペナルティエリア奥深くの位置の空中戦でもがき苦しむ坪井は、まるで溺れかけている人間のようだった。

玉田の2つのゴールでも、ケネディは自分の役割をきっちりと果たしていた。もっとも、「背番号16」は公式記録の「アシスト」欄には加えられず、試合後もその役割をアピールすることもなかった。しかし、玉田の2ゴールについてもケネディへのロングボールが伏線となっており、レッズのディフェンス陣が大慌てしているときに、小川が玉田へのパスコースを発見したのだった。シンプルだが、効果的、そして止めるのが厄介な攻撃だった――とりわけ闘莉王がまたも欠場しているときには。

ケネディが良いプレーを見せた瞬間は他にもあり、たとえば前半にはヘディングでの鮮やかなクリアで高原に何もさせなかったし、ピッチの中央付近でポンテにタックルを仕掛け、レッズのプレーメーカーを驚かせた。試合が進むにつれ、グランパスのファンによる「Come on Joshua」というコールが力強くなっていったことだろう。
ドイツで9年間過ごした後、ケネディは自らが望む新たな挑戦の機会を手に入れ、そしてJリーグはつねにニュースであり続ける選手を得たのである。

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ヨーロッパに挑む太田に幸運あれ!

2009/07/27(月)

2009年7月25日:日本での静かな生活を捨て、バッグを片手に海外でチャレンジしようとする選手には、ベストを尽くして欲しいと願う他ない。所属するジュビロ磐田から移籍できるチームを探しに渡欧すると金曜日に発表した26歳のウィングマン、太田吉彰もそんな一人である。
ジュビロユース出身の太田は、このままJリーグに留まって、現時点で115試合出場21ゴールという記録を着実に伸ばしていけたはずだ。しかし彼は自身を試すことを決断し、ヨーロッパのシーズン開始に合わせて移籍できるチームを探すことにしたのだ。彼の幸運を祈り、うまくチームが見つかることを願っている。

セルティックでの中村俊輔の成功により日本人選手の評価が高まった、スコットランドから始めるのがいいと思う。あるいは、最初は苦労したものの徐々に名前が売れてきた本田圭佑のいるオランダも、良いかもしれない。
太田の右ウィングでのスピードあるプレーは使えるだろう。前回、彼のプレーを見たのはたしか5月20日、ナビスコカップのグループリーグ、アウェーでの対大宮戦だったが、良いプレーをしていた。その試合は大宮が1-0で勝ったのだが、太田は持ち前のスピードと中央への切り込みでアルディージャの左サイドを苦しめ続けた。

太田のこうした資質は十分ヨーロッパのチームには魅力的なはずだ。さらに言えば、右ウィングの彼は、そう、センターバック、センターハーフ、そしてセンターフォワードといった、平均的な日本人選手が弱いとされているフィジカルな強さが求められるポジションよりも有利だと言える。
何よりも、太田は慌てる必要がない。数ヶ月かけてじっくりと移籍先を探せばいい。そして、もしもうまくいかなければ来年1月には日本に帰ってきて、2010年のシーズン開始に合わせてJリーグに復帰すればいいのである。
太田には、失うものは何もない。これから体験する全てのことが、彼の血となり肉となることだろう。

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炎の洗礼に立ち向かうネルシーニョ

2009/07/23(木)

2009年7月22日:監督が去り、順位は下から2番目、直近の試合はホームで敗れ、ディフェンスの中心選手が退場処分となり出場停止中……。表面だけを見れば、柏レイソルのホームである日立台には怪しい雲が立ち込めている。しかし、少し落ち着いて、全体を展望すれば、レイソルにはこれから立ち直り、さらなる降格を逃れるための時間は十分に残されている。
ホームでガンバに0-2で敗れたため、18試合を消化した時点での勝点は15にとどまっているものの、残留安全圏との勝点差はわずか4だし、11位との差も7に過ぎない。まだ16試合を残しているため、順位を駆け上がるための勝点はいくらでも獲得することができ、現在の状況は昨シーズンのジェフ・ユナイテッドほど絶望的なわけでもない。

レイソルが触手を伸ばしたのは、かつてヴェルディとグランパスの指揮を執ったほか、一時は代表監督の座にも近づいた人物、ネルシーニョ・バプティスタ。このブラジル人監督が最初に着手するのは、ディフェンスの強化だろう。レイソルの得失点差は現在マイナス18となっており、この得失点差がシーズン終了時に残留と降格を分ける要因となるかもしれないからだ。私が言うディフェンスとは、バックの4人だけではなく、チーム全体としてのディフェンス、とくに体の小ささが目立つ中盤の中央の選手たちが行なうディフェンスのことである。ネルシーニョは、その重要なポジションでチームを一つにまとめ、さらに攻撃型の選手の特性も活かしてくれるような人物を探すだろう。

新監督は、フォーワード陣の手駒が豊富なのにはすでに気づいているかもしれない。レイソルには、エキセントリックなプレーをするフランサや危険なポポから、常に一生懸命つなぎ役を演じる働き者の北嶋――ガンバ戦での野心的なボレーシュートがバーに当たったのは残念と言うほかはない――、トリッキーで派手なプレーをする若手の大津、スピードと気迫が特徴の、活気に満ちた動きとシュート力が売り物の菅沼など、人材が揃っている。ゴールを奪うのに十分な素材は揃っているが、ネルシーニョは正しい組み合わせを発見し、すべての選手に自分のためではなく、チームのためにプレーするのだという自覚を植えつけなければならない。

レイソルでの監督デビューはアントラーズ戦となるのだが、アントラーズはネルシーニョにとって最も敬遠したかった相手だろうし、しかもアウェーである。もっとも、少なくともこの「炎のバプティズム(洗礼)」によって、ネルシーニョは順位表の上にいるチームと下にいるチームの違い、それから残りのシーズンでこなさなければならない課題をはっきりと知ることができるだろう。

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ブラジル人選手はプロ入り前に何本のクロスを上げるのか

2009/07/20(月)

2009年7月18日:先日、シンガポールのボート・キーをぶらついていた時のこと。川沿いのとあるバーの外にある3台のテレビに映し出されたサッカーゲームの歓声とカラフルな映像に、私の目は釘づけになった。スタジアムの照明に照らされた鮮やかな緑のピッチを赤いユニフォームが攻め上がり、湧きおこる歓声。そして、バーの外で試合を見ている通りすがりの人々の拍手、どよめき。最初は、シンガポールのファンのためにマンチェスター・ユナイテッドの試合をリプレイで放映しているのだと思った。しかし近付いて見てみると、喜ばしくも驚いたことに、それは、さいたまスタジアムで行なわれていた浦和レッズサンフレッチェ広島のライブ映像だった。

フットボールチャンネルの放送だったのだが、私は最後の20分――高原がボールをスルーしてエジミウソンが1-1の同点弾、高原へのストヤノフのファウルで得たPKはエジミウソンが外した。そして、ポンテのフリーキックからエジミウソンが2-1と逆転のゴールを決めたシーン――を見ることができた。地元の客たちも、Jリーグの試合にかなり感心した様子だった。

ところで、JFA会長の犬飼基昭氏が、日本人選手がシュートを打たなさすぎるJリーグは“退屈”だと語ったという記事を見て、私がどれだけ驚いたことか。それだけでなく会長は、「ブラジル人選手はプロになる前に30万本のシュートを打つ。日本人選手は5,000本」とのバカげた統計を挙げていたのである。
“平均的”なブラジル人選手は、何歳でプロになるのだ? 16歳? いや18歳がほとんど? だとすれば、とんでもない数のシュートだ。これらの中には、日曜日の午後に砂浜でおばあちゃん相手に打ったシュートや、道端で妹たちを相手に打ったシュート、はたまた床の上に置いた上着の間で寝ている犬をGKに見立てて打ったシュートも含まれているのだろうか?
この統計がブラジルサッカー協会から出たというのはあまりにもバカげているし、その統計を、JFA会長ともあろう人物が、Jリーグを非難するために使うというのもおかしな話だ。

確かに、日本のサッカーはボールを回しすぎてシュートチャンスを逃すこともあり、見ていてフラストレーションを感じる時もある。ただ私にとっては、選手がウィングで良いポジションを得ながらもクロスを上げないのは同様にじれったく思う(決して“退屈”ではないが……)。
ブラジル人選手は日本人選手と比較して、プロになる前に一体どれくらいクロスを上げるのだろう? おそらく、ブラジルサッカー協会に聞けばこのデータも出してくれるだろう。シュートを打つべき時に打たない、また、クロスを上げるべき時に上げない。これはサッカーに対する感覚やセンスが欠如しているということだ。だが、私はそういう話をしたいのではない。

私が言いたいのは、犬飼氏の観点やコメントはあまりにも思慮に欠けるということである。日本の内外、サッカー界で彼の意見に同調する人は極めて少ないだろう。あの晩、シンガポールのボート・キーにいた人たちはもちろんだ。

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去る者は追わない主義で

2009/07/16(木)

2009年7月15日:そういうわけで、ブラジル人ストライカーがまたもJリーグから湾岸諸国に流出しようとしている。今回はダヴィ名古屋を去り、カタールウムサラルに移るそうだ。ところで、このような現象は、アジアのトップ・プロリーグとしてのJリーグの魅力あるいは評判の失墜を意味しているのだろうか?
個人的には、私はそんなことはまったくないと思っているし、エメルソンやバレー、ダヴィといったような選手たちが日本の良さとこの地での生活を捨て、湾岸諸国より提示された金銭をとりたいと言うのであれば、行かせてやればいいと思う。代わりになるブラジル人選手に困ることなどないのだから。

それから日本のクラブに絶対して欲しくないと思っているのは、ガルフ諸国からの税金非課税のオファーを断る代償として追加の金銭支払いを求めるエージェントにがんじがらめにされてしまうことである。そういうことはあってはならないし、このような移籍劇で明らかなように、金の問題がすべてであるのなら、日本のクラブはそうした移籍を受け入れ、できるだけ多くの移籍金を頂戴すればいい。
日本はこのような選手たちに才能を発揮する場を与えてきており、その結果が彼ら ――そして彼らの一族郎党――が生涯暮らせるほどの多額のサラリーだというのなら、彼らにはグッド・ラックという言葉を贈る他ない。

ただし、日本は彼らの移籍を嘆き悲しんではならない。このような移籍によって、新たな才能がJリーグで花開く可能性が開けるのだから。
グランパスを捨てウムサラルに移ることで自分自身がどのような者になるのか、つまり顔のないリーグにまたも登場した顔のないブラジル人選手になるしかないことを、ダヴィは分かっているはずである。Jリーグの観客数と華やかさに比べれば、湾岸諸国のサッカーはまったく異なったレベルにある。

今年の初め、中東、クウェートバーレーンにかなり長く滞在し、さらにテレビでも試合を観戦してきた経験から言えば、このような国々のリーグでもっとも特徴的なのは観客がいないということである。ファンの数は数千ではなく、数百というところ。通常はそれらのファンがメインスタンドに集まっている。つまり、カメラがピッチを端から端まで写したとき、ゴール裏やバックスタンドは閑散としており、静かで、ほとんど練習試合のような雰囲気である。ただし、そのような試合でも外国人選手は数百万ドルのサラリーを得ているわけだが。
盛り上がりや厳しさ、キャリアアップの可能性を考えた場合、これらの国のリーグは日本とは比べ物にならない。だから、行きたい選手は行かせてやり、人生の階段を一つ進ませてやればいいのだ。

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天皇杯再生には思い切った改革が必要だ

2009/07/13(月)

2009年7月11日:日本サッカー協会(JFA)が、天皇杯の改革を検討しているそうだ。ここ数年にわたり改善の必要性が取りざたされていたので、それはとても良いことだと思う。

最新のプランは、Jリーグの全36チームがセカンドラウンドからトーナメントに参戦するというもので、これまでよりJ2チームは1ラウンド、J1チームは2ラウンド早く登場することになる。これについては7月17日に、9月に始まる第89回天皇杯に2ヶ月先駆け最終決定がなされる。

協会は、参戦を早めることによって、思わぬ番狂わせが起こるなど早いラウンドから注目が集まるよう願っている。しかし逆に、Jリーグのチームが早々に敗退し、元旦の天皇杯決勝の4週間も前の12月5日に、リーグ戦終了とともに休みに入ってしまうチームが増えるという冷淡な見方もある。

そしてさらに、大きな問題がまだひとつ残されている。それは、天皇杯が選手やファンがサッカーを満喫してしまったリーグのシーズン終了直後に開催されるということだ。1月のキャンプ招集前に少しでも休みたい選手たちはモチベーションも上がらず、監督たちは契約終了と同時にクラブから放出される選手たちを選ばなくてはならず、外国人選手たちは帰国を、あるいは新しいチームを探したいのである。

こうした諸事情に加え、チームは日本中の競技場でわずかな観客の前でプレーするために右往左往せねばならない。現在の天皇杯が、サッカーを国内に広めるという目的に即していないことは明白だ。以前ならこれで良かったのだろうが、Jリーグの急速な発展がこれらを過去の遺物としてしまったのだ。

この問題については、JリーグとJFAがもっと協力すべきだと私は思う。もし協会が天皇杯を残したいと真剣に思うのであれば、Jリーグのシーズン終了を12月の第3週まで延ばすのもひとつの方法だろう。そうすれば元旦の決勝戦まで空白期間を作らない。そして、天皇杯の各試合を週末に行なうことで統一する。さらに、各ラウンド終了時に公開抽選を行なって再び注目を促し、シーズンスタート時にスタジアムを確保することによって、例えばガンバ大阪対大分トリニータ戦をジェフのホームグランド、フクダ電子アリーナで開催するといった馬鹿げたことをやらずに済む。

昨シーズン、ガンバ大阪がFIFAクラブワールドカップに参戦していたおかげで、名古屋グランパスは天皇杯の試合をシーズン終了から3週間も待たなくてはならなかった。こうした問題は、協会が思い切った改革をすることで解決できるのだ。少なくとも彼らにも問題点は分かっているようだが、これはより有意義な天皇杯開催のための、小さなステップにすぎない。

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大分よ、故障選手のシャツを持ち込むな!

2009/07/09(木)

2009年7月7日:大分トリニータに同情するのは簡単だ。順位表の一番下に張り付いたままだし、たくさんの故障者も抱えている。問題は彼ら自身が自分たちを憐れみすぎているということで、変える必要があるのは監督ではなく、気持ちなのである。

2週間前、等々力球技場で私は前記のような印象を抱いた。川崎フロンターレとの試合は、予想通り大分の負けだった。
選手たちがキックオフ前のウォームアップをしているとき、アウェーチームのベンチはまるでスポーツショップのようで、さまざまなトリニータのシャツが番号順に、すべてきれいにハンガーにかけられた状態で陳列されていた。最初、私はこれらのシャツは先発メンバーのシャツだと思った。キックオフの際に着るシャツを干しているのだと。しかし、実際のところ、それらのシャツはそこにいない選手、つまり故障欠場中の選手たちのもので、そのようなシャツがベンチの端から端までかけられていたのである。
その狙いは明らかで、選手たちが一致団結していること、故障欠場中の選手たちもチームメートと同じ気持ちで最後まで戦い、最後まで苦楽をともにする決意であることを示していた。

個人的には、私はこれでは逆効果だと思った。大分の経営陣には、故障中の選手のシャツなんかとり去って、今いる選手たちのことだけ、試合に勝つことだけに集中した現実的な対応が必要であるとアドバイスしたかった。私にはすべてが異常なくらい軟弱で、感傷的であるように思えた。まるで、「俺たちを見てよ! 故障者の多さに気づいてよ! ここにいない選手がたくさんいるんだよ!」と訴えかけているみたいに。
ひょっとすると、大分のベンチにはバイオリニストもいて、メランコリックなメロディを奏で、このお涙頂戴の物語をさらに盛り上げていたのかもしれない。彼らはふがいなく意気消沈し、自分たちを過度に憐れみ、試合終了のホイッスルどころか、試合開始のホイッスルの前にたくさんの言い訳を用意していたことだろう。

どうしたんだ、トリニータ! どうしてファイトを見せない? 故障は起こるものだし、不運もあるだろう。しかし、それを全員に押し売りする必要はない。やるべきことを、さっさとやるんだ!
私は同情なんかしなかった。私が思ったのは、彼らは女々しい人間の集団であり、自分たちの不幸を人前で嘆き悲しむばかりで、新たな意欲を掻き立てようとも、新たな方策を探ろうともしていないということだった。

大分よ、いいかね、前向きに考えるんだよ。たとえ、13連敗していたって。クラブがペリクレス・シャムスカを更迭するのが確実視されていても、シャムスカには、まだチャンスが与えられる見込みだ。おそらくこれが最後のチャンスとなるだろうが、日曜日のアウェーでのジュビロ戦である。戦術を語る前に、故障した選手のシャツは大分に残しておくべきだ。磐田にシャツを持ち込んで、陳列するのはやめろ!

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前向きに希望を持ち続ける稲本

2009/07/06(月)

2009年7月4日:まったく、稲本潤一には頭が下がる。稲本はこの夏、ヨーロッパで自身7つ目のチームとなるスタッド・レンヌ(フランス)と契約した。もちろん、来年夏のワールドカップ・南アフリカ大会でプレーすることもまだ諦めていない。

ここ数年彼が抱えてきた困難、そして正当な評価やスタメン獲得のための悪戦苦闘。日本に帰国し、日本中のファンやメディアのサポートを受け、経済的にも楽なJリーグでプレーすることを選ぶことなく、ヨーロッパで挑戦し続ける強靭な精神力を見せてくれている稲本。これは、サクセスストーリーと呼んでも良いのかもしれない。行きづまっても、代理人が稲本の名を広め始めると、いつもそれなりに良いチームと契約することができている。
レンヌではもちろん、元ガンバ監督のフレデリック・アントネッティが稲本のことをよく知っているから、ことさら能力を証明してみせる必要はない。彼はお馴染みの背番号6をレッド&ブラックのユニフォームでもつけるのだ。

だが私には、稲本にとって新たな、そして困難であろうと思えることがある。それは、フランス語と、フランスでの生活環境だ。イングランドトルコドイツでの日常生活に比べ、フランスのそれは慣れるまで時間がかかるだろう。ただしそれについては、サンテチエンヌで全くうまくいかず、グルノーブルに移籍した松井大輔という良い先生がいる。
夜は自宅に籠って日本から持ってきたテレビゲームをやるのではなく、積極的にチームメートと外出し語学力を鍛えたり、松井はフランス文化の中にどっぷりと浸っている。これが、彼がフランスで生き残るためのカギであり、ヨーロッパで成功するには単にダッカーの技術が優れているだけではダメということだ。

レンヌと2年契約を結んだイナには、チームに落ち着いて、慣れ、そしてサッカーを楽しむ時間はある。今シーズン、スターティングメンバーの座を勝ち取ることができれば、とりわけ中盤にもっとマッスルとパワーが欲しい岡田武史監督が、彼を放っておかないはずだ。

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日本勢対決の良い面

2009/07/02(木)

2009年7月1日:なんとも残念なことに、川崎フロンターレ名古屋グランパスがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準々決勝で対戦することになってしまった。UEFAチャンピオンズリーグで、イングランドのチーム同士が戦うときと似たような気分である。求めているのは何か目新しいもの、たとえば他の国のチームを相手にするという新しい刺激であり、毎週のリーグ戦で見られるような組合せではなかったはずなのに。

私自身も、月曜日の抽選ではJリーグ同士の対戦が回避され、日本の2チームがともに準決勝に進める可能性が残されればいいのにと思っていた。もっとも、そうなれば日本のチームがどちらも、11月7日に東京の国立競技場で行なわれる決勝どころか、ベスト4にも進出できないかもしれない。ただし、Jリーグのチームを信頼していたし、自信もあったので、そのようなチャンスに賭けたいというのが実感だった。きわめて現実的な見方をすれば、少なくとも日本勢は1チームが準決勝に残ることになり、現在の情勢では、フロンターレがグランパスとの2連戦を制して勝ち上がると考えるのが妥当なところだろう。

覚えているだろうか、フロンターレはACLの決勝ラウンドに進出した最初のJリーグ・クラブなのだ。2007年の大会では、優勝を飾った浦和レッズより先にベスト8進出を決めたのである。その大会では、フロンターレは負けなしであったが、イランのセパハンとの2試合はともにスコアレスドローとなり、結果的に等々力でのPK戦で脱落した。
それから2年、フロンターレはより力をつけたように見えるし、自信もみなぎっており、昨シーズンに比べて安定性に劣るグランパスを倒すには、十分すぎるほどの攻撃力がある。グランパスは、カールスルーエから移籍してきた、長身のオーストラリア人ストライカーのジョシュア・ケネディが戦力を底上げし、フロンターレのディフェンスをかなり苦労させるだろうが、両チームの比較では総合力で勝る川崎のほうが有利だろう。

アジアでは、中村憲剛さえ抑えればフロンターレは抑えられるという感覚があるかもしれないが、私は、それはまったく的外れな認識であり、そのような認識ではフロンターレの多彩なタレント、さらに空中戦、地上戦および両サイドの破壊力を思い知らされる結果になるだろうと思っている。もちろん、憲剛はキープレーヤーで、ジェフユナイテッド千葉の監督アレックス・ミラーが「流麗なプレーメーカー」と絶賛するほどの選手であるのは確かだが、フロンターレの試合運びには、彼以外にも多くの引き出しがあるのだ。
ドラガン・ストイコビッチは、1つのカゴに全部の卵を入れるようなやり方で、憲剛だけをひたすら抑え込もうとはしないだろう。彼も当然ながら、フロンターレのやり方を熟知しているからだ。両チームが激突する9月23日と30日、グランパスの監督として2シーズン目を迎えている、この若きセルビア人がフロンターレ打倒を果たすためには、彼がこれまで学んできたことすべてをぶつけなければならないだろう。

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