2009年5月26日:土曜日の午後、味の素スタジアムでの“多摩川クラシコ”は、その名に恥じない内容だった。このイベントは、東京スカパラダイスオーケストラによる「You'll never walk alone」のノリの良い演奏で始まり、川崎フロンターレが勝点3を獲得、さらにはFC東京の城福監督が怒り狂ったりと盛り沢山。
“JFK”こと城福監督は審判団に対してカンカンに怒っており、勝敗に関わる二つの重大なジャッジのせいでチームが2-3で敗北したと感じていた。
重要なジャッジの一つ目は、ブルーノ・クアドロスが鄭大世(チョン・テセ)のシャツを引っ張ったときのもので、反則があったのはペナルティエリアの内側ではなく外側だったのだから、レフェリーはPKではなくフリーキックを与えるべきだった、というのが城福監督の主張だ。二つ目は、フロンターレが2-2の同点に追いつくきっかけとなったフリーキックが不当であるというもの。
二点目については、私も“JFK”に同意である。梶山のタックルは問題がないように見えた。では、一つめのジャッジについてはどうだろう?
残念ながら、あれはPKが与えられてしかるべきだった。プレーはペナルティエリアの内側に入るまで継続していたし、ゴールを決められる機会をチョン・テセから奪った反則だからだ。レフェリーの扇谷健司にとっては、何のためらいもなくレッドカードを出せる、めったにない状況であり、そのためレッドカードが妥当であるかどうかについては誰も議論しようとはしなかった。
内側だったのか、外側だったのか? それが問題だった。私にはどちらでもあるように見えた。それゆえ、あのような見え透いた反則を犯したあとに、東京がフリーキックという罰則で逃げおおせるのは無理というものである。
ブルーノ・クアドロスはどのように弁明すればいいのだろう? 「レフェリー、俺はタイミングを完璧に見計らってシャツを引っ張ったんだよ、ちょうどボックスのすぐ外になるようにな。どうしてそれがPKになるんだよ? みんな、騙されているんだよ!」
私にはそんな弁明が通用するとは思えない。
ジュニーニョがPKを決めてからは、ゲーム全体の様相がガラリと変わった。東京にしてみれば、11人対11人で2-0とリードしていた状況が、10人対11人となり2-1と一変したのである。
フロンターレが相手の場合こちらが11人でも大変だというのに、相手が怒り、貪欲に攻めてきているところを10人で持ちこたえるのは、ほとんど不可能である。たとえ、2-1でリードしていても。
それから、二つ目の出来事があった。梶山のプレーが反則だとジャッジされたのである。正当なタックルだと私には思えたけれど。
東京の選手たちは犯罪現場周辺で会議を開くつもりでいたようだが、フロンターレがすぐにフリーキックを蹴り、谷口の鮮やかなシュートでボールがゴール上方のネットを揺らし、スコアは2-2。
白いシャツの軍団がすごい勢いで前線に殺到し、レナチーニョが持ち前の機敏さと読みの鋭さを発揮して、ファーポストに決勝点のゴール。もはや避けられないと思われていたことが現実となった。
東京スカパラダイスオーケストラの演奏も、今野の見事な先制ゴールも(あのシュートは、コーナーキックで今野本人がヘディングしたボールがバーを直撃し、その跳ね返りを彼自身が改めて蹴り込んだものだったが、あのヘディングはシュートチャンスを生み出すための、自分へのアシストだったのだろうか?)、それから走りこんできた石川の低い弾道の豪快なシュートも、ホームチームのファンにとっては遠い、遠い過去の思い出となってしまった。
その思いは、城福監督とて同じであろう。