レイソルのニューヒーロー
2009年3月27日:今年もナビスコカップが始まった。そしてまた、各試合後の“ニューヒーロー賞”投票もスタートした。この賞は23歳以下の選手が対象で、Jリーグは丁寧に、各試合のチームメンバー表でどの選手が対象なのかを示してくれている。
水曜日、私のお気に入りのスタジアムの1つである柏日立サッカー場でレイソル対FC東京の試合が行なわれた。雨がぱらつく寒い夜だったが、5,835人の観衆がスタジアムで活気溢れる試合を観戦した。この試合には各チーム6人ずつ、計12人のニューヒーロー賞対象選手がいたのだが、私はレイソルのレフトバック石川直樹に1票を投じた。大津祐樹が多くのメディアの注目を集めるなか、石川を推す私はおそらく少数派、いやもしかしたら私一人かもしれない。
試合前日に19歳の誕生日を迎えたばかりの若きストライカー・大津は、確かに才能溢れる選手だ。華もあり、スピードもある。常にアップテンポなプレーをする選手だ。
怪我こそしなかったものの、彼が徳永に足を掛けられ転倒しフリーキックを得(え)、そしてポポがゴールを決めレイソルが2-0とリードした。さらに、後半早々には藤山のファウルを誘ってPKを獲得、これを自ら決めて3-1とした。その後も大津は金沢を翻弄しつづけ、左サイドの突破を繰り返し、FC東京のディフェンスにイエローを食らわせた。
なのになぜ、大津じゃないのかって?
うーん……。現時点で、大津は私の好みとしてはちょっと派手すぎると言うところだろうか。確かに彼の足技は素晴らしい。だが、まだその技をいつ使うのか、いやハッキリ言おう、いつ使わざるべきかを学んでいる最中なのだ。時として上手くいくかどうかわからない素早いスピンを使うより、きちんとボールをコントロールして短く安全なパスを出した方が良い場合もあるということを、経験と共に理解し、学んでもらいたい。そういうプレーは上手くいけば観衆も湧くし、テレビで何度もリプレーが流れるだろう。しかし、もし上手くいかなければボールを失い、チームを危険にさらすことになる。ある人はそれを“運が悪かった”と言うだろうが、本当は悪かったのは“運”ではなくて“選択”なのだ。大切なのはスタイルではなく、本質。しかし、若い日本人選手は得てしてその二つを履き違える。
石川は、堅実な、いいレフトバックだ。レイソルの山根の先制点のきっかけとなった素晴らしいクロスを冷静に上げた。そこには派手さはない。ただ、やるべきことをきちんとやったというに過ぎない。だがそこが、9月には24歳になる石川。華やかな技術を持った大津の成長には、まだ時間がある。
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