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ジュビロを引き上げた松浦

2008/12/18(木)

2008年12月16日:ベガルタ仙台を迎え撃ち、トップリーグ残留を決めた試合のあと、ハンス・オフト監督はジュビロ磐田のこの1年を「ジェットコースターのようなシーズン」と表現した。しかし、ジェットコースターには高いところと低いところ、上昇と下降があるが、今シーズンのジュビロは下がりっぱなしだろう、と私は常々思っていた。入れ替え戦までは、まったくそうだった。
ちょうど最後の時期になり、ジュビロは新たなヒーローを見出した。19歳の松浦拓弥。入れ替え戦を2戦合計3-2で制したジュビロの全得点を叩き出した選手である。

7月17日(対名古屋、2-1)にJリーグデビューを果たしたばかりだというのに、松浦には自信と勢いが備わっており、年季の入ったチームメートたちのリーダー役を務めていた。アウェーで戦った初戦でジュビロがリードを奪われたあとも、松浦はペナルティエリアの端からの強烈な左足シュートを決めチームメートの士気を高めた。試合は1-1で終わったが、ジュビロはアウェーゴールという貯金を得た。

松浦は、ホーム戦ではハーフタイムの4分前に目を見張るような先制ゴールを決め、仲間の神経を沈静化させた。前田の左サイドからのクロスに胸で合わせたボールがキーパーの頭上を越え、ファーサイドの隅に入ったのである。まぐれのシュートではなかった。よく動く、小柄なミッドフィルダーが見せた即興的な技巧で、ボールがあのような高さにあれば、彼にはあれしか方法がなかったのである。
試合開始から70分後の2点目には、彼の野心、スキル、ポジティブ・シンキングの強みがよく表れていた。駒野のクリアボールに合わせると、相手ディフェンダー2人を抜き去り、チップキックのシュート。ボールはキーパーを越え2-0となった。
次の日の豊田スタジアムでは、アデレード・ユナイテッドのキャプテン、トラヴィス・ドッドがほとんど同じような状況に遭遇し、ガンバのディフェンスを瞬く間に切り裂いたが、シュートはファーポストの外に流れ、一連の動きを得点で締めくくることはできなかった。松浦の冷静なフィニッシュのおかげで、ジュビロは2-0のリードを保ったままロスタイムを迎えることができた。

だが、最終盤にドラマのないJリーグはJリーグではない。ベガルタのキャプテン梁勇基(リャン・ヨンギ)が鮮やかなフリーキックで川口のゴールを破り、興奮のクライマックスを迎える準備を整えたのだ。アウェーゴールがもう1つ決まれば、ベガルタがJ1昇格、ジュビロはJ2降格となる。
しかし、ジュビロが頑張り抜いた。終了のホイッスルが吹かれたとき、安堵した川口はピッチに崩れ落ち、数分のあいだ立ち上がることができなかった。ジュビロがJ1に残ったのだ。下がりっぱなしのシーズンに上昇をもたらした、松浦のおかげで。

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