順当だけど、やっぱり驚き
2008年10月4日:土曜日の国立競技場。シャンパンのコルクが弾け、その泡が最後に消えたあとに振り返れば、ナビスコカップ決勝の結果はまったく順当で、予想通りでさえあった。それでも、やっぱり驚きなのだ。少なくとも、私にとっては。
本当のところ、私は、この試合に限ってはエスパルスが勝つと思っていた。エスパルスが決勝に向けて勢いづき、調子も良さそうだったのに対し、最近の大分は少しもたつき気味で、危なっかしい感じがしていた。だが、この日のトリニータは完璧な試合運びを見せ、おなじみの、効率的で非情なサッカーでじわじわとエスパルスを葬った。
こうした試合では、いつも先制点が大きな意味を持つものだが、先制後のトリニータは、チーム全体が完璧に統率がとれた状態になったように見えた。エスパルスを絶えずその支配下に置くことができただけでなく、機を見て攻撃に転じることもでき、絶好の時間帯に追加点を奪い、その日の勝利を決定的なものにした。
クラブにとっても、若きブラジル人監督ペリクレス・シャムスカにとっても記念すべき勝利だったが、それを巧みにアシストしたのはピッチ上の3人のコーチ、つまり中盤のエジミウソンとホベルト、前線のウェズレイである。もちろん、彼らが正式なアシスタント・コーチでないことはわかっている。しかし彼らは“選手兼コーチ”と呼べるほど強い影響をチームに与えている。
エスパルスについていえば、持ち味を発揮できなかったのではないだろうか?
エスパルスが苦戦していることは、中盤のダイヤモンドの頂点にいて、強い走力を持つ2トップの原と岡崎の後方でプレーしていた枝村が精彩を欠いていたことを見れば明らかであった。82分に代えられたとき、私は彼がまだピッチにいたのを忘れていた。それほど、大分のディフェンスが見事だったのである。
前半には、高木が惜しいシュートを横に外したり、終盤に登場した矢島の左足の際どいシュートがあったりもしたが、その日の午後を通して、エスパルスはシュートを打てる位置でボールを得るのに苦労していた。
正直いうと、試合開始早々1分に妙な感じがしていた。深谷が原にファウルを犯し、大分が自陣のペナルティ・エリア左側からのフリーキックを与えた直後のことだ。
試合が始まったばかりなので、エスパルスは得点力のある青山と高木をゴール前に置き、兵働が正確な左足でゴール前にボールを供給するものとばかり思っていた。決勝戦のこのような段階では神経がまだ高揚しているかもしれないので、ディフェンスのミスもありえないことではないからだ。
しかし、エスパルスはそうではなくやたら凝ったパス回しをし、それは失敗に終わった。結果的に、兵働が苦手の右足でシュートを打つはめになってしまったからだ。ボールは、高さも、幅もゴールから大きく外れ、大分は何の苦労もすることなくこのフリーキックをやり過ごすことができた。なんという無駄だろう!
トリニータは、勝利に値するサッカーをした。一方、エスパルスの長谷川健太監督は、時計の針を戻して土曜日のランチタイムからもう一度やり直したいと思っていることだろう。
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