緑に塗られた東京ダービー
2008年8月27日:最近、Jリーグが積極的に取り組んでいる施策の1つに、ローカル・ダービーのプロモーション強化がある。ただし、東京ダービーの場合はJリーグもそれほど必死になる必要はない。両チームが、自らの手でやるべきことをやってくれているからである。
今シーズン、私はFC東京と東京ヴェルディのJ1での2試合をどちらも現地で観戦したのだが、いずれも信じられないような結末となり、それぞれのゴール裏に陣取っていた多数のファンは感動を得て帰路についた。
4月に行なわれた味の素スタジアムでのヴェルディのホームゲームは、不運な柴崎の終了間際のオウンゴールがあり、FC東京が2-1で勝利を収めたが、土曜日に行なわれた国立競技場でのFC東京のホームゲームでは、ヴェルディが復讐を果たした。
なんという幕切れだったことか!
後半の45分が過ぎロスタイムの3分に入ったとき、すべてが一変した。ディエゴがまたも前線に現れ、左足でFC東京のゴールにすさまじいシュートをお見舞いしたのだ。それは超人ハルク級の鋭さと凶暴さを持ったシュートだったが、GK塩田がなんとか外に弾いてコーナーキックに逃れた。
ヴェルディ・ファンの集まっていたコーナー付近の緑の密集の前から、ディエゴが東京のゴール前にボールを上げると、那須大亮が高いジャンプからヘッドで合わせ、スコアは2-1に。どうやら、那須はこのグラウンドのあの側のゴールが好きなようだ。5年ほど前のアテネオリンピックの予選でも、那須はこの国立競技場の同じ側のゴールに今回と同じような素晴らしいヘディングシュートを決めたのを、覚えている。
レフェリーが試合終了のホイッスルを吹くまでに、FC東京にはリスタートするだけの時間がまだ残されていた。だが、ヴェルディのボスである柱谷哲二が土砂降りの雨のした駆け寄って来た歓喜の選手たちと抱き合うなか、FC東京の選手たちはスタジアムを取り囲むファンの怒りにさらされ立ち尽くすしかなかった。
『復讐とは冷やすほどおいしくなる料理である』という諺があるが、今季初めに味スタで苦杯を喫する側に回ったヴェルディ・ファンは、まさにこの復讐の味を堪能したに違いない。ヴェルディがリーグ戦そしてカップ戦でダービーデイに勝ったのは、実に5年ぶりである。
那須の終盤の決勝ゴールの伏線となっていたのは、2つの素晴らしいゴールだった。
1つはカボレが決めたFC東京の先制点。ゴール前約25メートルから放たれた右足の驚異的なシュートが、あっという間に土肥の守るゴールに突き刺さっていた。
もう1つは、大黒将志が決めたヴェルディの同点弾。レアンドロから絶妙のショートパスを受けたあと、前進してきた塩田(仁史)の頭を越した、デリケートなチップシュートであった。
かつてFC東京に在籍し、現在はヴェルディのゴールを守っている土肥についていえば、後半の羽生のミドルシュートを見事にセーブしたのが印象に残った。羽生がジャストミートして放ったシュートはカーブを描きながらゴール上隅に向かっていたが、土肥は体をめいっぱい伸ばし、ボールを弾いてコーナーに逃げた。この試合の勝敗を左右した、決定的なプレーだった。
これらすべてのドラマに、さらに、長友の幻のゴールを巡る議論もある。それは今野のオフサイドが原因だった。ペナルティエリア付近から、この右サイドバックが強烈なシュートを放ったとき、今野が土肥の少し後ろにいたのだ。こうした経過を見れば、今シーズンの東京ダービーが自然発生的な人気を呼んだのがよくわかる。
これが2009年にも再現されますように――つまり、両チームが来年もJ1でプレーしていますように。
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