柏木をひたすら賞賛したい
土曜日、特別な選手になれる資質を持った若者が、特別なゴールを決めた。
サンフレッチェ広島ユース出身で、弱冠19歳の柏木陽介が、神戸戦で真の意味で美しいゴール――リプレーを見れば見るほど素晴らしく思えるゴール――を決めたのである。
当然ながらシュートは左足で打たれたもの。チャンスを生み出したのは佐藤とウェズレイの見事なポジション・チェンジだった。ペナルティ・エリア付近でフリーでボールを受けると、柏木はワンタッチでボール・コントロール。左足でボールを包み込むようにして理想的なシュートを打つと、ボールは左サイドからゴールのファーサイド隅に突き刺さった。
まさに、“(ベッカムではなく)俊輔みたいなカーブボール” !(※)それはフリーで打った素晴らしいシュート。相手選手の気分を害したり、挑発したりすることもなかったゴール後の祝福シーンでは、彼の創造性がまたも発揮されることとなった。
ロジェ・ミラ・スタイルでお尻をくねらせたあと、柏木はボーリングを実施。ボールをレーンに転がし、おそらくストライクをとったときのようなポーズをとった。
試合は結果的に2−3で敗れたが、サンフレッチェの2つ目のゴールもなかなかのものだった。このときは右サイドの駒野が供給した熟練のクロスに合わせた、ウェズレイの教科書に載っているようなヘディングシュート。
しかし、駒野が守備から攻撃に切り替え右サイドをするすると駆け上がり、決定的なパスを送るタイミングを見計らうことを可能にしたのは、一体誰なのだろう? やはり、柏木なのだ。柏木は、イビチャ・オシムが見たら喜びそうなボールタッチ、スピード、冷静さと頭の切り替えの速さを披露したのである。
もちろん、オシムは柏木のことをすでによく知っている。間近に迫ったカナダでのU−20FIFAワールドカップは、この若者がその才能を知らしめる完璧な舞台となるだろう。
かなりの才能があるということと、今回のような大きな舞台で潜在能力を発揮するというのはまったくの別物だ。
とはいえ、現時点では、柏木陽介にはハリー・キューウェルとハリー・ポッターを足して2で割ったような個性がある。そう、左利きの、優しそうな策略家で、その両足で魔法を使うのである!
※訳注
2002年公開(日本は2003年)のイギリス映画「ベッカムに恋して」の原題を訳すと、「ベッカムみたいなカーブボール(Bend it like Beckham)」となる
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