アルビレックスを後押しする、坂本の経験
土曜日の味の素スタジアムでの試合を見れば、アルビレックス新潟がキリッとまとまったチームを作り上げ、トップリーグでの地位を揺るぎないものにしつつあることがわかっただろう。
FC東京を3−1で破ったその日の午後は、かつてのジェフユナイテッドの隊長・坂本がとりわけ印象に残っている。彼は私のお気に入りの若手選手の1人である伊野波を徹底的に苦しめていた。
ジェフ時代の坂本はあらゆる位置でプレーしており、両サイドも、ディフェンスも、中盤もできる多様性が特色だった。だがアルビレックスでは、オーソドックスな4バックの左サイドが定位置となっている。
坂本の前には爆発力のある鈴木慎吾。2人の危険なコンビネーションにより、FC東京は4バックの右サイドにいる伊野波のスピード不足が露呈した。私は、伊野波はどちらかというとセントラルDFか守備的MFとしての方が、その真の才能を発揮できると思っている。
アルビレックスの先制ゴールを決めたのは坂本。必死の様子の川口から、まるで赤ん坊からキャンデーを取り上げるみたいに簡単にボールを奪い、あっさりとシュートを決めた。川口は後ろに下がって伊野波をサポートしようとしていたのだが、まるで悲運を1人で背負っている感じだった。坂本はタイミングを見定め、ハナカマキリのように情け容赦なく襲いかかった。すべてがあっという間の出来事。
アルビレックスには、なかなか高さもある。特にセントラルDFの永田と千代反田。それにストライカーの矢野の高さが目立つ。日本代表のオシム監督が矢野に目をつけたのも納得だ。矢野は常に動き回り、いつもスペースを探している。TBSお気に入りのサッカー選手・久保――野生的で、予測不可能、マークするのが厄介――にも、少し似たところがある。
外国人選手では、シルビーニョがアルビレックスの中盤を指揮し、東京戦ではゲームを支配していた。攻撃陣では、強靭なエジミウソンが中心的存在。東京戦で1ゴール挙げたが、もうあと2点くらい決めてもおかしくはなかった。今でもチームの躍進に欠かせない存在である。
第3の外国人選手、マルシオ・リシャルデスはサンカイターノ(ブラジル)でプレーしていた選手。中盤の右側でプレーし、ゴールに切れ込むスタイルが合っているようだ。
東京とは違い、アルビレックスは1つのチームとしての姿勢を崩すことがなく、ボールを正確に回す。そのチームで全ての中心になっているのが、リシャルデスだ。東京が得たオウンゴールもリシャルデスが中心となったもの。鈴木規朗の左からのクロスを、彼がゴールに押し込んだのだ。
そう、アルビレックスは、自信たっぷりで組織だったチームなのだ。チャンピオンになれるほどの構成ではないが、順位表の下位ではなく、上の方の、首位近くに位置できるだけの力があり、どんな相手でも、ホームでもアウェーでも、恥ずかしくない試合ができる。
最後はやはり、GK北野にも触れなければならない。誇張するつもりはないが、終盤にルーカスのシュートを阻んだセーブは、ワールドクラスだった。東京にすっかり馴染んでいるこのブラジル人FWは、ゴール横の角度のない位置から放った、カーブをかけたシュートが上手く軌道に乗っていると思ったことだろう。しかし北野が体をいっぱいに伸ばし、右手でボールをバーの上に押し出したのである。
それはもう驚嘆すべきセーブで、今季の最優秀セーブの有力候補に挙がるほどのもの。Jリーグ、あるいはテレビ局がそのような賞を設けたら、の話なのだけれど。
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