避けようがなかった阿部の移籍
遅かれ早かれ、阿部はジェフユナイテッドを去る運命にあったのだ。
ジェフのイビチャ・オシム前監督は、3年前のプレシーズンにおける懇談でこうなることをすでに予見していた――むしろ意外に遅かったのを驚いているかもしれない。
オシムによると、お金と野心のあるビッグクラブが介入してきたときに、チーム最高の選手の慰留に失敗するのが、ジェフの常。阿部のレッズへ移籍でも、まさに同じことが繰り返されたのである。
阿部の抜けた穴は、ジェフにとってあまりにも大きいものとなるだろう。阿部はクラブのシンボルであり、誇り高く、統率力のあるキャプテン。また、複数のポジションをこなせる選手でもあった。
ただし、ほとんどのケースでは佐藤勇人と並んで中盤の中央でプレーしており、実際には、前線の阿部と佐藤にリベロのストヤノフが加わった三頭体制がチームの基本であった。
とはいえ、これからプレーするレッズ、そして現在の日本代表における阿部のポジションは、中央に闘莉王、左側に坪井が入る、スリーバックの右側に落ち着きそうである。
ジェフ・ファンは、たとえ今シーズンではなくても、近い将来、次にチームを去るのが誰なのか気が気でないに違いない。
巻? 水野? 水本? それとも羽生?
マルチプレーヤーの坂本の新潟移籍には、まだ救いがある。水野が穴を埋め、スタメンに名を連ねることになりそうだからだ――これは、クラブにとっても、代表にとっても朗報である。
敏捷でクレバーな水野は、右サイドはもちろんのこと中央寄りのポジションでも効果的な働きをし、巻の背後の奥深くから攻撃に参加することができる。
噂によると山岸が阿部の後を受けキャプテンになるそうだが、もしそうなら、私にとっては意外な人選だ。責任感を持たせれば少しはおとなしくなるだろうと考え、オシム・ジュニアはストヤノフをキャプテンに指名するのではないかと思っていた。
その奔放な才能を言葉ではなく、足技で表現しているときには、このブルガリア人選手は間違いなくJリーグで最高のオールラウンド・プレーヤーとなり、1人でディフェンスラインを構築できるし、攻撃に参加しては一度に3〜4人をドリブルで抜き去ることができる。
やる気になったときの彼は、もはやJリーグのレベルではない――ただし、出場停止でベンチに座っていては何の役にも立たない。
阿部はストヤノフから、そして“プロフェッサー”斉藤から、今後も守備の要諦を学びとることができたのに、ジェフ・ファンにとって残念なことに、学んだことをこれからは浦和のために活かすのである。
正直言うと、私は次のシーズンのジェフ対浦和戦が待ち遠しくてならない。昨シーズンの試合は絶品といえるもので、スリルに満ちた試合展開のなか、巻と中島のゴールでジェフが2−0の完封勝ちを収めた。
阿部が移籍した今シーズンの試合は、より格別なものになるだろう。
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