闘莉王を試していれば…
遠く離れた東京で開かれた日本代表監督退任記者会見でのジーコのコメントを、とても興味深く読んだ。
日本がワールドカップで苦戦したのは、背の高い選手が少ないからで、これがオーストラリア戦はもちろん、クロアチア戦でも響いた。ジーコはそう指摘している。
これが事実だとしても、ジーコは、ライプツィヒで抽選が行なわれた去年の12月から、この点を認識していたはずである。日本はタフで、当たりの強いチームと同組になったと分かっていただろうし、今年初めにサンフランシスコで行なわれた親善試合で米国にズタズタに切り裂かれたときには、警告音がさらに大きく鳴っていたはずである。
しかしジーコはディフェンスの強化にはまったく手を打たなかった。したことといえば、以前からいる選手を重用することだけ。
前にもこのコラムで書いたが、調子さえ良ければ、松田直樹はJリーグで最高の日本人選手だ。ただし、彼は2005年、ワールドカップ予選を前にして自ら代表合宿を離れ、ジーコのみならず自分自身をも失望させる結果となってしまった。そうした経緯を考えれば、ジーコが松田を二度と招集しなかったのも理解できる。
ただし、この言い分は浦和レッズの闘莉王には当てはまらない。ペナルティエリア付近で荒っぽいことをすることがあるものの、彼の高さと筋肉は将来の日本代表に大いに役立つだろう。
2006年の一連の親善試合のなかで、私は、闘莉王はジーコが試す価値のある選手だと思っていた。しかし、ジーコは1度も闘莉王を招集しなかった。
レッズのギド・ブッフバルト監督は、坪井が先に代表チームに招集されたが、日本で最高のディフェンダーで最もヘッディングが強いのは闘莉王だと今シーズンずっと言い続けていた。
5月末に行なわれた外国人スポーツライター協会の会合で、ゲストとして講演したブッフバルトは、ジーコとサッカーの話をする機会は2年前に一度あったきりだと聴衆に語った。
なぜジーコは闘莉王にチャンスを与えないのかと質問されると、ブッフバルトはこう答えた。
「私にはわかりません。しかし聞いたところによると、闘莉王はピッチ上で喋り過ぎるとジーコは考えているそうです」。
おかしな話である。ジーコはいつも、相互のコミュニケーションの欠如が日本人選手の欠点だと言っているのに!
だから私は、日本には十分な高さを持った選手がいないという意見には賛成しない。こういう議論を聞いていると、日本のディフェンダーの体格について日本人記者から疑問を投げかけられたときのフィリップ・トルシエの返答を思い出す。
「メキシコには、松田くらい背の高い選手はいますか?」。
トルシエは言った。
「メキシコはいつもワールドカップに出ています。日本にとってこのことは問題ではないのです」。
もちろん、ジーコがやっておくべきだったことをいまさら話しても遅すぎる。しかし、新しい選手を入れ、チームをリフレッシュさせようとしなかった彼の姿勢が、日本の凋落の1つの原因となったのである。
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