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松田のいない日本代表

2006/05/11(木)

ジーコがワールドカップ(W杯)の代表メンバーを発表する5月15日が刻一刻と近づいているが、Jリーグ最高峰とも言える、この選手が招集されることはなさそうである。
ただし、彼は故障しているわけではない。
体調は問題なし。クラブの情報筋によると、W杯に行けそうもないので落ち込んでいるそうだ。
話題の主は、横浜F・マリノスのキャプテン、松田直樹である。

この29歳のセンターバックが、日本でトップクラスのオールラウンドプレーヤーであるのは確かだ。彼がその気になれば、このレベルでならどんなことだってやってのけるほどの能力があるし、私は2年前、松田はJリーグのレベルを超えており、さらに成長するためにはヨーロッパに渡る必要があると書いたと記憶している。
松田は頑強で身体能力の優れたディフェンダーで、3バックならどのポジションでも任せられるし、4バックならストッパーもリベロもこなせる。技術もあり視野も広いので、ディフェンスの前に置けば素晴らしい「ボランチ」になるかもしれない。

さらに言えば、先日味の素スタジアムで行なわれたナビスコカップのFC東京戦、松田は中盤からボールをキープして前線に攻め込み、絶妙のチップシュートを決めているのだが、これは今シーズンのこれまでで最高のゴールの1つだった。それはまるで、エリック・カントナを髣髴させるような素晴らしいゴール。同じようなことができる日本人選手はそれほど多くないだろう。

しかし、それなのに、松田は日本代表の23人には選ばれそうにない――理由は自分自身にあることを、彼もわかっているだろう。
「8人組」による鹿島での悪名高き無断外出のあと、ジーコは規律違反に対しは厳しい姿勢を貫いている。昨年の代表合宿で先発メンバーに選ばれなかったことに不満を抱き、合宿を無断で離れた松田はまさに高い代償を支払わされたのだ。
ジーコが忠誠心をなにより重視していることはことあるごとに立証されており、松田が代表に復帰する道は閉ざされたまま。
ただし、私は自分の意見を曲げようとしないジーコを批判しているのではない。ただ、松田の起こした短気が、彼自身にとっても、日本代表チームにとっても、高いものとなったと言っているのである。
松田―宮本―中澤のバックラインは、ジーコがドイツで起用するどのようなディフェンスラインよりも強力になるのではないだろうか? 松田がいれば、3バックの中心、あるいは4バックの中央についてジーコはより柔軟な選手起用ができるようになるのではないだろうか?

ヨーロッパ組の選手を全員揃えても、松田以上の選手はそういない。
松田は時間を1年戻し、自尊心を抑えて代表合宿に留まっていれば…と後悔しているのではないだろうか。
ああ、しかし、ジーコにとっても、松田にとっても、もう遅いのだ。

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