驚く価値もない、エメルソンの移籍
エメルソンのカタール移籍は、驚くに値しない。
「金のためだよ」。レッズのコーチングスタッフの1人が言った。不在の“ヒーロー”の最新情報を知りたくて、土曜日に大原練習場へ出かけたときのことだ。「サッカーのためじゃない」。彼はそう付け加えた。
「選手が、その選手生活の終了間際にプレーして最後の大金を稼ぐ場所だね」。
現代のサッカーではその場所をカタールといい、今回はアルサドがその舞台となる。
エメルソンも、明らかに金銭面を考慮したようだ。
とても、とてもたくさんのお金。エメルソンは浦和で年間100万ドル(約1億1000万円)以上を稼いでいたと言われているが、それを上回る額。おそらくはるかに上回る額だ。
エメルソンが日本で不可解な移籍をするようになったのは、たいして昔のことではない。
2000年にコンサドーレ札幌で34試合に出場し、31ゴールを記録したが、エメルソンが前年のJ2王者のメンバーとしてJ1に登場することはなかった。
エメルソンは川崎フロンターレに移籍し、J2に残ったのだ。川崎Fだけが、彼の金銭面での要求に応えられたからだ。あるいは、彼の代理人の金銭面での要求と言うべきかもしれない。
J2でのエメルソンはピッチ内を縦横無尽に駆け回って相手選手を翻弄し、とても楽しそうだった。しかし、次のシーズンの途中、2001年の夏に浦和へ移籍した。
もちろん、エメルソンはゴールを量産してずいぶんとレッズファンを喜ばせてきたが、彼と、彼の代理人はもう少しファンを大切に扱うべきだっただろう。
エメルソンにはブラジルでの長い休暇が与えられていたが、再来日、そしてキャンプへの参加が2〜3日遅れることが当たり前のようになっていた。
2〜3日の遅れがやがて2〜3週間となり、告知が壁に貼り出され、彼はもう日本には戻ってこないということが明らかになった。
いわゆる彼の“仲間”が埼玉ダービーで大宮アルディージャに負けていた頃、エメルソンは大盤振る舞いの移籍契約の詳細をつめるためにヨーロッパにいたのだ。
あまりにもナイーブすぎる、あまりにも英国人的で善悪にこだわりすぎる。私をそう批判する人もいるかもしれない。
そういう人たちは、こう言うかもしれない。
「なあ、エメルソンはプロなんだぜ。短い選手生活のなかで、できるだけ多く稼がなければならないんだよ。これまでの人生で誰にも親切にしてもらえなかったのに、自分から親切に振舞う必要がどこにあるんだい?」
それも、わかる。
しかし、サッカーにはお金では割り切れないものがある。それは個人のプライドであり、忠誠心、チームのため、クラブのためにプレーするということだ。
彼を崇拝していたサポーターは、ひどく落ち込んでいるに違いない。
しかし、こんなことは驚くに値しないと考えてほしい。
そのゴールや才能は認めるけれど、私個人としては、この先エメルソンに戻って来て欲しいなんてことは少しも思わないだろう。
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