バンコク雑記
そう。1997年のジョホールバルとは状況が少し違ったが、2005年のバンコクも、“日本代表”の歴史に刻まれる都市となるだろう。
1968年のメキシコシティのように歓喜に包まれたり、1993年のドーハのように悲観に暮れたり。歴史に刻まれるその理由は様々だ。
バンコクは疑うまでもなく、真のサッカー都市。その証拠は至るところにある。人々が世界の有名チームのレプリカユニフォームを着て仕事をしているのだ。
レアル・マドリード、インテル、バイエルン・ミュンヘン、リバプール(当然ながらいま最も売れている)、そして…ジェフ!?
いや、本当なんだ。
北朝鮮対日本戦が行なわれる日の朝、私はバンコク国立競技場周辺のスポーツショップを見て回った。そう、黄色を避けながらね。どうしてかって?黄色といえば、やっぱりブラジルだ。それは遠慮したい。
ところが、黄色の山の中に少し違った黄色、緑のエリの付いたものを見つけたのだ。ラックから引っ張り出してみると、そこにはまぎれもなく赤、黄、緑の紋章とその上に「ジェフ市原」と書いてある。
もちろん買いましたとも!ホームシックだったしね。結局全部で7枚買って、合計2800円、1枚400円だった(アディダスさん、ごめんなさい!)。
他の6枚はすべて代表チームのもので、それぞれ違う色、デザインだった。これは誕生日やクリスマスのプレゼントにピッタリだ。
それにしても、だ。ジェフのユニフォームがなぜバンコクに?
店員に尋ねてみたところ、製造元のオール・リーグ・スポーツが、日本のチームの中で最も良いデザインだと考えた1チームを選んだのだという。ジェフはホームゲームの何試合かを蘇我だけでなくバンコクでも開催してはどうだろう。
え?試合?日本が北朝鮮に負けるなんてことは、これっぽっちも心配していなかった。
そんなことよりも試合前に売店で飲み物を買った時、お金をちょろまかされるんじゃないかってことの方がよっぽど心配だった。
とにかく猛烈に暑い。ミネラルウォーターを5本買ったのだが、財布には1000バーツ札(約3300円)しかなかった。
水は1本10バーツ。私が店員にお金を渡すと、彼はお釣りを取って来ると言い、ニコニコと愛想の良いアシスタントに売店を任せて出て行った。
10分待っても彼は戻ってこない。私は自分の犯した間違いに気付き始めていた。1000バーツといえば、おそらく売上げの少ない日の2日分に相当するだろう。そして彼は、私が試合を見に来ていることも、じきスタジアムの中へ入っていくであろうことも分かっていたに違いない。
そうやって最悪の事態を思い浮かべながら、私は汗にまみれていた。彼が10枚の100バーツ紙幣を手に戻ってきたとき、どれだけホッとしたことか。
彼は「100バーツで10本買わないかい?」と言ってきた。
しかし私は5本しか買えないと答えた。なぜかって?だって、ジェフにお金を全部つぎこんでしまっていたからね!
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