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ささやかだけれど大切な、長谷川健太のスポーツマンシップ

2005/03/17(木)

土曜日の味の素スタジアムは、まるで昔に戻ったようだった。
ピッチの外には、おなじみのヴェルディの人気者、ラモスと北澤がいて、さらにパラグアイの陽気なGKチラベルトが最上段のエグゼクティブ・ラウンジで観戦していたのだ。
チラベルトはもちろん引退しているが、両チームのGKがともに相手を完封した0−0の試合結果に満足したことだろう。
もっとも、2人のGKが攻撃に参加せず、相手陣地でFKを蹴ろうとしなかったことは残念だったかもしれないが。
また、ジーコの兄であり、アシスタント(テクニカルアドバイザー)であるエドゥーとともに、日本代表のGKコーチ、カンタレリも来ていた。私は、派手ないでたちのヴェルディのGK高木がまたも注目を集めるだろうと思った。

川口が故障で離脱したため、ジーコには、楢崎、土肥に続く(あるいは、土肥、楢崎の順番か?)、日本代表の第3のGKが必要だ。
たぶん、月曜日には高木が代表メンバーに選ばれるんだろうな。
と、考えた私がバカだった。ジーコは鹿島アントラーズの曽ヶ端を招集した。とはいえ、高木にチャンスがやって来るのも、それほど先のことではないだろう。
ピンクのシャツに黒の短パン、ピンクのストッキング、そのうえ白のグラブと白のシューズの高木は、GKというよりは――まあ大柄だが――勝負服に身を包んだジョッキーのようだった。これなら、ジーコの目に入らないわけがない。

両チームともディフェンスが良かったが、とりわけエスパルスの4バックが素晴らしかった。
清水の新監督となった長谷川健太は守備陣を経験豊富な選手で揃え、右サイドには市川、中央には斉藤と森岡。左サイドにはジュビロ磐田から移籍してきた山西を配していた。
斉藤と森岡は危険なワシントンをマークし続けていたが、大変だったようだ。
「ワシントンはとても背が高いし、体も強いですね」と隆三。試合後の彼は、ラップのコンサートに――観客ではなく歌手として――行くような服装をしていた。
「彼は体を使ってボールをキープしますね。背中を向けられるとボールに届かないので、なかなかボールを奪えません」。

清水にとって幸いだったのは、ワシントンのシュートがゴールの枠を外れていたこと。それに、終了間際に放った見事なヘディングは、ボールが西部の手に当たったのだ。
実際には、エスパルスの方により決定的なチャンスがいくつかあった。特に前半、ゴールの外に飛んだ崔兌旭(チェ・テウク)のヘディング・シュートは決定的だった。

後半には、ささやかだけれど注目すべきことが1つあった。ヴェルディが攻勢に立っているとき、ボールがタッチラインを越え、エスパルスのベンチ前に転がった。
ボールを手にした人物は、スローインのために待ちかまえているヴェルディの選手に直接ボールを投げようかどうか、躊躇した。結局、その人物はボールをヴェルディの選手に届かないように放り投げることにした。
タッチライン沿いに立っていた健太は自らそのボールを拾い、ヴェルディの選手に投げた。それからベンチの方を向き、わざわざ混乱を招いたり、プレーを遅らせたりせずに、最初からこうするべきだったということを件の人物に知らしめたのである。

現役時代、誠実で、精力的に動き回るセンターフォワードだった健太が示そうとしたのは、いわばスポーツマンシップであり、これこそが世界中のサッカー界で求められているものだ。
冒頭に述べたように、まるで昔に戻ったようだった。昔は、このようなスポーツマンシップが当たり前だったのだ。現在は、ほとんど注目されなくなっているけれど…。

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