嘉人か、ヒデか?
ある特定の人物についてコメントを求められたとき、フィリップ・トルシエはいつもこう答えていた。
「そうだね、彼はとてもおもしろい選手だ。」
これはトルシエが、“ある特定の人物”こと大久保嘉人に接触するようになる以前のことだ。
セレッソ大阪のこのフォワードは、まさにとてもおもしろい選手である。
私は、試合中の大久保の動きを観察するのが好きだ。もっとも、土曜の午後の市原スタジアムで私の前に座っていた、セレッソ大阪の女性ファンほど熱心ではないが。
ピンクの、「Okubo 10」の文字入りシャツを着た、この女性ファンは、自身の若きヒーローの写真をできるだけ良い角度で撮ろうと、カメラを手にメインスタンドを動き回っていた。
試合の序盤、この女性は私の前の席に座っていたが、あっという間に席を離れてしまった。最初、私は自分のアフターシェーブ・ローションのせいだと思ったが、あとになって、彼女は「嘉人パトロール」に出ているのだとわかった。
試合終了後、私はセレッソのクロアチア人監督、アルベルト・ポボルと話をした。ポボルは大久保を「卓越した才能」と表現した。
ポボルは、大久保はヨーロッパでプレーすべきだと語った。彼によれば、大久保はヨーロッパのどのレベルでもプレーでき、かの地に渡った多くの日本人選手とは違い、ベンチ要員に甘んじることもないそうだ。
ポボルは、大久保は中田英寿より才能があるだろう、とまで言った。
「中田も素晴らしい選手で、偉大な選手だが、才能では大久保の方が上だと思う」とセレッソの監督は言う。
「大久保はとてもスピードがあり、素晴らしいテクニックがあり、まだ若い…、つまり大久保にはすべてが揃っているんだ。」
おもしろい話だと思う、本当に。
個人的には、大久保の才能とゴール前での一途さは認めるが、ピッチの内外で自身を律する方法など、中田から学ぶべき点はまだたくさんあるだろう。
中田は、冷静で、集中力があり、自制心をもってプレーしている。大久保も、昨シーズン以降、少しおとなしくなったように思える。これは良いことだが、同時に気迫や情熱を失ってもらいたくはない。
この気迫と情熱をうまく活かしてほしいものだ。
土曜日の市原戦の試合中、大久保は右サイドでマーカーの坂本は抜けなかったもののコーナーキックを得たのに、悔しそうにボールをコーナーフラッグに投げつけた。(ひょっとすると、ラインズマンを狙ったのかもしれない!)
この態度は悪くない(ボールをコーナーフラッグに投げつけたことである、念のため)。彼がゲームに集中していて、ひたすら勝ちたいという執念を持っていることがわかったからだ。
中田が最初、それほど強くないペルージャへ移ったのは、移籍としては完璧だった。ペルージャで、中田はいとも簡単にチームに溶け込んだが、さて、オリンピック後の大久保はどうなるのだろう?
トルシエなら、こう言うかもしれない。
「大久保…、うん、彼はとても面白い選手だね。」
しかし、中田以上の才能なのだろうか?
それもやがて明らかになるだろう。
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