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イルハン・ショー、東京で幕開け

2004/02/12(木)

 ショーのスターがアリーナに登場する準備が整ったときには、室内には期待と興奮が渦巻いていた。
 照明が落とされ、ドラムが轟くなか、「プリンス」が随員に守られながら登場した。
 ただし、プリンスはプリンスでも、ポップスターのプリンスではない。
 登場したのは、2002年ワールドカップでトルコ代表の一員として大活躍し、すさまじい数の日本人ファンから「プリンス」と呼ばれている、イルハン・マンスズであった。
 火曜日の午後、東京の高級ホテルで、プリンス・イルハン・マンスズが総勢200名(!)のマスコミにお披露目をしたのである。
 多くの人が、2002年当時の柔らかそうな長髪とはがらりと変わった短髪に驚いたが、白のTシャツの上に黄色のシャツと白のスーツを着たイルハンは、カメラの放列の前で輝いていた。

「明るい未来にしたいという希望を込めて、このスーツを選びました」とイルハン。
 髪形について。
「ファンの皆さんのほとんどが憶えているのは長髪の僕だと思いますが、今はこの髪形が気に入っています」
 デビッド・ベッカムについて。
「日本には、彼のファンがたくさんいるようですね。偉大な選手ですし、尊敬しています。彼のファンを横取りしようとは思いません。僕には僕のファンがいますからね。」
 微笑むたび、身振り手振りをするたびにカメラのシャッター音が立て続けに起り、19のテレビ局のスタッフがやたらと質問を浴びせかけた。

 豊富な資金力を誇る楽天の支援を受けるようになったヴィッセル神戸では、1万1000人弱だったホーム・スタジアムの平均入場者数を、今シーズンは2万人に増やしたいとしている。プリンス・イルハンは、躍進を目指す新生・神戸の象徴となる選手であり、彼自身と所属していたトルコのクラブであるベシクタシュには、相当な額の金銭が支払われた。

 どうかすると、とくに微笑んでいるときには、イルハンは、「愛と青春の旅立ち」のような映画に出ていた頃の若きリチャード・ギアを彷彿とさせた。
 ヴィッセルが獲得したのは、サッカー選手なのだろうか? それとも映画スターなのだろうか?
 もちろん、ヴィッセルとしては両方であって欲しいと思っているだろうし、ヴィッセルの幸運を願わずにはいられない。関西のサッカーには人気の起爆剤が必要であり、興味を喚起するために、ヴィッセルはプリンス・イルハンを獲得したのである。
 しかし、このストライカーに驚異的な活躍を望んではいけない。
 イルハンは28歳で、ワールドカップの英雄となったあとも、トルコに残っていた。ヨーロッパへのビッグクラブへの移籍はなかったし、チェルシーへの移籍もなかった。
 ワールドカップではトルコの7つの試合すべてに出場したが、最初の6試合は途中出場であり、フルタイム出場したのは3位決定戦の韓国戦だけであった。
 ゴール数は3。準々決勝のセネガル戦での決勝ゴールと、「死闘」となった韓国戦での2ゴールだ。

 イルハンは偉大な選手ではないが、ヴィッセル神戸にとっては偉大な存在である。
 今シーズンは、お近くのスタジアムでイルハン・ショーをお楽しみ下さい。

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