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アントラーズ時代の終焉?

2003/10/09(木)

 土曜日の味の素スタジアム、FC東京が5−1で鹿島アントラーズを圧倒している試合を観戦していたら、自分は1つの時代の終焉を目撃しているのかもしれないと思えてきた。
 1996年以来4度のリーグ制覇、3度のナビスコカップ優勝、2度の天皇杯優勝を誇った、アントラーズ時代の終焉である。
 かつてのアントラーズはそこにはなかった。もちろん、どんなチームだって、2人が退場を食らっていれば勝負にはならないもので、アントラーズは、前半に名良橋がペナルティーボックスのすぐ外で戸田を倒し、後半には小笠原が2枚目のイエローカードをもらって退場処分となっていた。
 小笠原は前半に石川に対するファールで1度警告を受け、後半には茂庭との小競り合いのあとに2枚目のイエローカードをもらった。正直言って、私はどちらのケースもFC東京の選手が要領良く立ち回った結果だと思う。とりわけ、茂庭はきわめて巧妙であったし、2枚目のイエローカードは小笠原には気の毒であった。
 とはいえ、それだけが、アントラーズがゲームのあらゆる局面で圧倒された理由とはならないだろう。

 前半、FC東京が2−0でリードしていた時にはすでに、ホームのファンはパスが通るたびに「オーレ!」と揶揄の声を上げていた。ファンは、闘牛士に翻弄される、年老いて、くたびれきった闘牛にアントラーズの選手を見立てていたのだ。闘牛と同じように、結果は火を見るより明らかで、FC東京はさらに3点を上げ、哀れな生贄にとどめの剣を突き刺した。
 アントラーズの広報によると、鹿島がリーグ戦でこれほどの大敗を喫したのは、1995年にベルマーレ平塚に7−0で敗れた時以来だそうだ。
 鹿島の守備陣は年をとりつつあり、それに取って代わるべき羽田や金古といった選手たちはいつも故障を抱えているように見える。

 試合前、クラブの社長である牛島洋氏に聞いたところによると、不運な中田浩二はヒザの手術を受け、復帰は来シーズンのセカンドステージになるかもしれないそうだ。
 中盤に中田浩二の狡猾さときめ細かさを欠いているのが、アントラーズの泣き所だろう。私自身は、日本の歴代の名選手に比べて優るとも劣らない才能を持つ青木に大いに期待したいところではあるが。
 攻撃陣では、柳沢と鈴木がヨーロッパのクラブにレンタル移籍しており、エウレルは故障、長谷川は引退で、残っているのは平瀬とルーキーの深井だけで、ティーンエイジャーの中島が交替要員を務めているという有り様である。
 アントラーズには明らかに得点力が不足しており、今シーズンのセカンドステージ制覇はかなり厳しいのではないかと思う。
 アントラーズのファンは優勝慣れしているが、しばらくは忍耐が必要になるだろう。

 最後に、FC東京にも一言。約3万人の観客が詰めかけた、土曜日の「ブラジルDay」は、活気に満ちた、色彩豊かなスペクタクルであった。ホームチームが攻勢に出て、ゴールのアナウンスがポルトガル語で流されるたび、アントラーズのトニーニョ・セレーゾ監督は背筋がぞっとしたことだろう。
 アントラーズが、憎らしいほどに強かった数年前の状態に戻るには、まだまだ時間がかかるようだ。

*本コラムは、10月7日に書かれたものです。

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