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カタールも悪くない

2003/07/17(木)

 あの試合から1年が過ぎ、フィリップ・トルシエがついに監督業に復帰した。
 今週の初め、トルシエはカタール代表チームの監督として2年間の契約にサインしたが、選手をじっくり見る時間はない。
 いきなり大きな試練が待ち構えていて、カタールは、2004年に中国で開催されるアジアカップの本大会に、なんとしても出場しなければならないのである。
 トルシエは、4年に1度開催される、アジア版のヨーロッパ選手権とも言うべきこの大会を熟知している。日本代表チームの監督として、2000年10月にレバノンで開催された同大会で優勝した経験があるからだ。
 しかし、カタールが入った予選グループBを突破するのは困難な仕事で、来年夏に中国で行われる本大会に出場するには、パワフルなクウェート、それより力は落ちるもののシンガポールやパレスチナを破らなければならない。予選は 9月から10月にかけて行われるので、トルシエは大急ぎでベスト・チームを編成しなければならないのだ。

 先月、フランスで開催されたコンフェデレーションズカップの期間、私は何度かトルシエと話す機会を得た。
 私は、トルシエがカタール代表監督の仕事に一心不乱に打ち込み、選手たちが経験したこともないような緊張感をチームに持ち込むのは間違いないと思っているが、当時のトルシエはヨーロッパのクラブから好条件のオファーがなかったことに、とてもがっかりしていた。
 トルシエは、フランス、スコットランド、アイルランド共和国の各代表の監督候補にあがっていたし、昨年は中国代表の監督に就任する可能性もあった。中国は、日本代表チームと同じ手法で、若くダイナミックな一群の若手選手を発掘し、鍛えてもらうことをトルシエに望んだが、トルシエ自身は同じことはしたくないと考えていたようだ。
 トルシエはエリートの仲間入りがしたかった。とりわけイングランドのプレミアリーグで、アーセン・ベンゲルや、悪くてもジェラール・ウリエくらいの成功はしたいと思っていた。

「イングランドから要請があると思っていたけど、市場が完全に冷え込んでいるね。どのチームも監督を替えようとしないんだからね」トルシエは、今でも諦めきれないようであった。意中のクラブはトットナム・ホットスパーであったが、グレン・ホドルの留任が決まっていた。
 フランス、スペイン、イタリアのクラブでも良かったのだろうが、エジプト、リビア、イラクからの要請は拒否していた。
 しかし、トルシエはカタールを選んだ。カタールの国内リーグは現在、注目の的である。10年前のJリーグ発足当時と同じように、大物選手が次々と入団しているからだ。
「カタールも悪くないさ」と懐かしのトルシエ・スタイルが出た。
「カルロス・ケイロスも、4年前はアラブ首長国連邦の監督だったけど、今はレアル・マドリードの監督だ」
 来年のアジアカップか2006年ワールドカップの予選で、カタールが日本と対戦するとしたら?
「僕はプロフェッショナルだから、自分が指揮するチームが日本に勝って欲しいと思うだろうね。負けてやろうなんて思わないよ」とトルシエ。
「でも、変な気分だろうね。僕は日本の強さを知っているし、日本の選手は僕の監督術を知っている。僕には、日本の選手はみんな自分の息子みたいに思えるし、4年間ともに過ごしたことは、忘れられない思い出だからね。」
「さあ、新しい冒険の始まりだ!」

 日本には今なお彼を批判する者はいるが、私はトルシエには是非ともアラブ湾岸の国で成功して欲しいと願っている。

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