称賛よりも勝利を
正直なところ、私はコンフェデレーションズカップでの日本代表の戦いぶりには納得がいかなかったのだが、ともかくフランスでの2週間の滞在を終え、東京に戻ってきた。
コロンビアに1−0で敗れて日本チームが大会の途中で帰国したあとも、中立の立場の専門家から聞こえてくるのは、好意的な意見ばかりであった。
「日本は準決勝に進出できるだけの力はあった」と言う人がいた。
「日本はあまりにも運がなかった」という意見もあった。
「日本は今大会でも屈指の素晴らしいチームであった」と言う人さえいた。
土曜日、パリで開かれ、大勢の記者が出席した記者会見で、FIFAのジョセフ・プラッター会長は、大会では「素晴らしいサッカー」を見ることでき、個人的には、トルコと日本が、そのプレーと「斬新な」チームワークで印象に残った、と述べた。
その翌日、私はフランス競技場で決勝戦を観戦した。その日は、記者全員による大会最優秀選手の投票も行われ、イングランドから来た同僚は中村俊輔に投票していた。
「中村は1試合半しか出場していないのに?」と私は訊ねた。
「うん。でもフランス戦でのフリーキックは、この世のものとは思えなかったからね」というのが答えであった。
そう、その点には同意しよう。中村俊輔のフリーキックはまさに驚異であった。力の入れかたも、精度も申し分なく、ファビアン・バルテスもお手上げであった。実を言うと、私はあのフリーキックは遠藤保仁が蹴るだろうと思っていた。左利きの中村より、右利きの選手が蹴ったほうが角度的に良さそうだったからだ。
おそらく、あのフリーキックはジーコ・ジャパンを象徴するものであったのだろう。すべてが、個人の能力によるものであったから。
最優秀選手の投票に話しを戻すと、私は1番目にティエリ・アンリを選び、その次にトルコの背番号20の守備的ミッドフィールダー、セルクク・サヒンを選んだ。サヒンは若干22歳ながら、その成熟度と落ち着きぶりは見事なもので、これから長く国際舞台で活躍する選手だと思えた。
3番目には、中田英寿を選んだ。身内びいきだと思われるかもしれないが、中田はやはり日本になくてはならない存在であった。
個人的な意見では・・・まあ、MVPの投票はこれが全てなのだが、私は選手としての格でも、実力でも、中田はMVPに値する選手だと思った。
残念だったのは、キャプテンの中田が経験の少ないチームメートを懸命に励まし、引っ張ろうとしていたにも関わらず、日本チーム全体は中田個人の才能に見合うプレーを見せられなかったことだ。
日本に戻り、コンフェデレーションズカップの結果をホームではどう受け止めているかを見たが、日本のファンの反応はフランスの専門家の意見よりはるかに現実的で、合理的であり、ジーコは代表監督として現在も様々な課題を抱えたままであると感じさせるものであった。
ホームで戦う、8月のナイジェリア戦、9月のセネガル戦、11月のカメルーン戦は、ジーコの今後にとって重要なゲームとなるだろう。
フランスでの戦いは失敗であり、成功ではなかったのだ。
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