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秋田と崔、日韓の柱

2003/06/02(月)

 伝統の一戦、日韓戦が近づくにつれ、テストステロンの分泌が盛んになりテンションもあがる。
 この試合には両者とも負けられない。勝者は母国にもたらした国家威信に胸を張るだろう。
 敗者は傷を舐めながら敗走し、次回の雪辱の機会を待つことになる。
 こうした激しい対抗心が背景にありながらも、金曜午後の東京国立競技場では心暖まる1シーンがあった。

 日本代表はチームの練習時間を終え、ミックスゾーンと呼ばれる取材を受ける場所を通りチームバスへと向かっていた。
 ちょうどその時、韓国代表が到着し、日本に続いてピッチへ上がるために粛々と更衣室へと向かって歩いていた。
 突然、秋田豊の前に見覚えのある顔が見え、彼は「ヨンス!」と声をかけた。
 ジェフ市原でプレーしている韓国代表の要、センターフォワード、崔龍洙も一瞬この声に驚いたようだったが、チームメートから離れ秋田に近寄った。
 二人は握手を交わし、笑いながら土曜日のお互いの健闘を誓い合った。

 ピッチ内外を問わず日本で崔の笑顔を見る機会はそうあるものではない。特に試合中の彼は得点する事だけに集中しているからだ。
 だからこそ彼はチームから高給を支払われているわけで、彼もゴールする事でこれに応えている。今シーズンだけでも既に彼は9得点をあげ、得点ランキングをリードしている。
 崔も秋田もお互いの力をよく知っている。そして、お互いのできが試合結果を大きく左右することも知っている。
 これはまさに恐れを知らないディフェンダーとフォワードの典型的な戦いであり、両者はお互いのライバルに打克つために己の全てをぶつけ合う事になる。

 崔は日本戦での得点を何よりも欲しているし、今シーズンあげた9得点と土曜夜の勝利を交換しても惜しくないと思っていることだろう。
 また、ベテラン秋田もアンドラーズの誇るベストディフェンダーとして、フォワードとの激しく果敢な争いを何よりも求めている。
 照明に灯がともり、ホイッスルが吹かれ、そしてスタジアムが青色に染まった時、両チームからそれまで交わした笑顔は消える。
 金曜午後に秋田のとった行動は試合の格好の広告になっただけでなく、また秋田のフェア精神と人間性をも表した出来事だった。

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