アーセン・ベンゲルはとても人目を引く。
背が高く、スリムでハンサム、そして成功者の輝きを持っている。ベンゲルは常に引く手あまたである。
1996年に名古屋グランパスエイトからアーセナルへ移り、イングランドに新風を送り込んだ。
知性があり、明確で、教養もある。それはまるで平均的イギリス人サッカー選手像とは正反対で、彼の最大のライバルであるアレックス・ファーガソンのようなラフでタフなスコットランド人とは明らかに違っている。
準決勝のフランス対トルコ戦では、私はスタッド・ドゥ・フランスの観客席の上段に座っていたが、そこからでもテレビ局のクルーと話したり、知人と握手をしているベンゲルの姿がよく見えた。
どういうわけか、チケットやパリの地図、ノート、メンバー表や試合結果表などを入れたカバンを失くしてしまい、インタビューエリアに入れなかった私が試合後にベンゲルと1対1で話をできたのは本当に偶然の事だった。
壁際で二人の中国人ジャーナリストに捉まっていたベンゲルの姿を見かけた時、私のそれまでの憂鬱な気分は吹き飛んだ。
彼はすばやく私を見つけると、二人をかきわけて私の方へ歩み寄り握手してきた。そしてそのままその場所を後にしたのは言うまでもない。
すでに彼はインタビューで話し疲れていたうえに、車も待っていたので長話はできなかったが、中田英寿や日本代表について非常に興味深い話を聞くことができた。
中田英寿は本当にアーセナルへ移籍するのだろうか?
「チームにはすでに10人のMFがいるんだ。中田をどこでプレーさせるって言うんだい?もっと現実的に見てもらいたい」彼はそう言った。
「どのチームだって選手は多すぎるくらいなんだ。需要がないよ」
そこで私は中田がプレミアリーグで成功できると思うか尋ねてみた。
「もちろんだとも。昨シーズンと比べても彼はタフになったし、成長したよ」ベンゲルは断言した。
かつて、代表監督は隠居の仕事だと私に話したベンゲルは、フジテレビで放映したサンテティエンヌでの日本対フランス戦の解説をした。
その試合が彼個人の見た唯一の日本戦だったが、彼は日本代表の素晴らしい試合に感心した、いや、むしろ日本はフランス相手に頑張りすぎて、引き分けで良いコロンビア戦に0−1で負ける羽目になったのだとベンゲルは語った。
私が思うに、おそらくベンゲルはフィリップ・トルシエと話したに違いない。3−0でニュージーランドに勝利した日本は、すべてのエネルギーをコロンビア戦に温存しておくべきだったとトルシエは言う。トルシエは日本代表が同じメンバーで最初の2試合を戦ったのは大きな間違いだったと語った。
また、彼は日本体表を評して「ビーチサッカー」と言う。プレーしたり観戦したりするのは楽しいが、規律も組織もないと・・・。
相変わらずトルシエは喋り続ける。
しかしもうスペースも残り少ない。この続きはいずれまた。