サッカーの奇跡
「神様からの贈り物だよ。たぶん。こんなことはサッカーの中でしか起こり得ないよ」
これは先週日曜日、豊田スタジアムでベガルタ仙台を2−1で下した名古屋グランパスエイトのスロベニア人監督、ズデンコ・ベルデニックの、ワールドカップにも出場したことのあるオーストリア代表FWイヴィツァ・ヴァスティッチが終了間際に挙げたゴールについてのコメントである。
試合はまさにヴァスティッチのグランパス最後のホームゲームにふさわしいものとなった。
ベルデニックの希望に反して解雇されたヴァスティッチのサヨナラ試合は、5月24日、土曜の夜に磐田スタジアムで行われる対ジュビロ戦のはずだった。
そういうシナリオだった。
しかし仙台戦の76分過ぎ、ヴァスティッチは今シーズン3枚目のイエローカードを受け、ジュビロ戦への出場が不可能になった。
残り14分、ヴァスティッチはこれがグランパスでの最後の試合であると気が付いた。
ロスタイムも残り1分となった時、試合は依然として1−1のままであった。
興奮高まるなか、グランパスは仙台ゴールから30メートルの地点でフリーキックを得た。ウェズレイがヴァスティッチにボールを落とすと、ヴァスティッチは右へ切れ込み、右足でシュートを放った。
ボールはネットに吸い込まれ、仙台にはキックオフの時間しか残されていなかった。そしてホイッスルが鳴った。
なんとドラマチックな結果だろう!
プレス席で、ジャーナリストは常に公平でならなくてはならない。そして感情をあらわにしてはならない。そんな事は十分理解していた。
しかし、この日に限っては違った。ネットが揺れ歓声が絶頂に達したその時、思わず私は両こぶしを空に突き上げていた事を白状しなければならない。
だが、このこぶしは名古屋の勝利のためではなく、サッカーの奇跡を祝福したものだ。
いみじくもベルデニックが言ったように、まったく起こりえないことだった。
しかし、ヴァスティッチはそれを実現した。そして彼の名古屋における短かいキャリアは忘れがたいものとなった。
これが世界中にあるサッカーの奇跡なのだ。
先週土曜日、それがたまたま豊田スタジアムで起こっただけなのだ。
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