京都の希望、関西の希望
黒部光昭が天皇杯決勝で決めた見事な決勝ゴールは、歴史的なトロフィーを初めて京都パープルサンガにもたらしただけではなかった。
黒部のゴールは関西のあらゆるクラブに、来シーズンは自分たちも栄誉を手に入れ、ジュビロ磐田と鹿島アントラーズの2強支配に割って入ることができるのだ、という希望を与えたのである。
黒部がペナルティー・エリアの端から放った左足の強烈なシュートがゴールキーパー、曽ヶ端準の手をかすめ、ゴール上隅に突き刺さって決勝ゴールとなり、京都はアントラーズとの激戦を2−1で制した。
黒部のゴールが決まったのは80分過ぎ。日本のカップ戦で抜群の成績を誇る鹿島の、ナビスコ・カップと天皇杯の2冠を阻止するには、京都は10分間耐えればよかった。
京都に対する祝福の嵐が自然と巻き起こった。祝福は京都のファンだけでなく、中立の立場の全てのファンからのものでもあった。
権威あるトロフィーに新しい名前が刻まれ、日本中にその栄光が響き渡るのは、やはりさわやかで画期的なことなのである。
だから、この日は黒部にとって、京都にとって、そして関西にとっても誇りある日であった。何と言っても、1993年のJリーグ発足以来関西のクラブが初めて手にした栄誉なのである。
Jリーグ発足時の10チームに列していたガンバ大阪に加え、その後セレッソ大阪や京都パープルサンガ、ヴィッセル神戸が次々とリーグに参加したが、どのチームもリーグ総合優勝やナビスコ・カップ、天皇杯といった主要なタイトルとは縁遠かった。
一方のアントラーズは1993年以来、9回の主要タイトル獲得を数え、リーグで4度、ナビスコ・カップで3度、天皇杯で2度優勝を飾っている。
さらに、ジュビロ磐田は今シーズンを含めてリーグ優勝3回を数え、ナビスコ・カップでも1回の優勝がある。
パープルサンガの勝利を振り返った黒部は、関西地域全体にとって意義のある勝利だと強調した。
「京都が天皇杯を獲得したことは、来シーズン、関西のあらゆるクラブの刺激になると思います」と黒部は語る。
「今日は挑戦者の立場でしたし、負けてもともとでもありました。
「しかし試合が始まるとチーム全体に、優勝するぞという気迫、やる気がはっきり出ていました。
「下馬評が低くてもタイトルは獲れるんだということを僕たちは証明しました。今回の京都の優勝は来シーズン、関西の自信になるでしょう。
「個人的には、この試合の後、早く次のシーズンが始まって欲しいと思っています!」
前半15分過ぎ、柳沢敦の絶妙なチップキックのシュートがクロスバーを叩き、ブラジル人ストライカー、エウレルが至近距離からのヘディングでゴールを決めた時には、鹿島がゲームを支配するように思えた。
しかし後半、韓国代表のスター、朴智星(パク・チソン)のポジションをライトウィングからストライカーの後ろで自由にプレーできる位置に変えた、京都のドイツ人監督、ゲルト・エンゲルスの決断が功を奏した。
後半ちょうど5分過ぎ、右サイドでの鈴木慎吾のフリーキックに朴が頭で合わせて同点ゴール。
これでゲームの流れが大きく変り、黒部を先頭に5人の攻撃陣を配した特徴的な布陣で京都が攻勢に転じる。
そして80分過ぎ、栄光へのチャンスを掴んだセンターフォワードが堂々たるゴールを決める。
京都にとって忘れられない日となったのはもちろんだが、今回の京都の勝利により関西が心理的なバリアーを打破し、来シーズンのJリーグをより活発にする起爆剤になって欲しいと思う。
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