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巣立ちゆく高原

2002/12/19(木)

 高原直泰がジュビロ磐田のフォワードとして中山雅史と組んだ当初は、「魔術師とその弟子」のエピソードそのものであった。
 これは古い民話で、若くて熱心な弟子に自分の魔法をすべて伝授する魔法使いのお話だ。
 中山と高原を見ていると、私はいつもこのお話を思い出す。
 中山は何でも知っている知恵深き老魔術師で、高原は、その老魔術師に仕え、魔法を身につけたいと思う、熱意に満ちた初心者である。
 高原は23歳にして2002年シーズンJリーグ最優秀選手に選ばれ、そして今、教育の時は終わりを告げようとしている。
 中山は自分の仕事をまっとうし、高原も師匠の教えを熱心に吸収した。
 高原が、「ゴン」と呼ばれる選手以上の教師と今後巡り合うことは、おそらくないだろう。

 ピッチでは、ゴンはゴール・マシーンである。ゴンはペナルティー・エリアの略奪者であり、いつどこにポジションをとればいいのかを本能でわかっている。ゴールの位置を感じとり、ターゲットに狙い打つという驚異的な能力も、やはり彼の本能なのである。
 たとえこれだけの才能があったとしても、選手というものはチームのために全力でプレーしなければないものであり、ゴンは素晴らしい得点記録を残しながらも、自分勝手なプレーをする選手と言われたことは一度もない。
 ピッチを離れても、中山の態度は称賛すべきものである。中山は心からサッカーを愛しており、この姿勢は高原にも受け継がれた。2人の選手は一生懸命練習し、個人の能力を向上させようと常に努力してきた。
 高原のMVP受賞は、まったく文句のつけようのないものである。27試合で26ゴールを挙げただけではなく、1998年のMVPである中山とともにチームを前線で引っ張ってきたからだ。

 いま、タカはドイツに旅立ち、ハンブルガーSV(SVはドイツ語のSport Vereinの略で、「スポーツクラブ」の意味)に入団しようとしている。かの地では、彼はすべてを一から学び直さなければならないだろう。
 体力が要求されるドイツのサッカーに順応しなければならないし、執拗で荒っぽいマークをし、マークを外されそうなときには相手を削ることさえ厭わない、狡猾で、機を見るに敏なディフェンダーともわたり合わなければならないだろう。
 タカにとって、ヨーロッパの4大リーグの1つ—ドイツはイタリア、スペイン、イングランドと並び称されている—でのプレーは貴重な経験であり、名を上げるチャンスでもある。
 選手時代にどこでプレーしようとも、自分はサッカーの魔術師、中山以上の教師に巡り合えないということは、タカもわかっているだろう。
 弟子は、修業期間を終えたのである。

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