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またも見せつけた、アントラーズのプロ精神

2002/11/07(木)

 試合前の話題は、カップ戦の決勝初登場の浦和レッズばかりに集中していた。
 しかし、ナビスコ・カップがロマンチックな結末を迎えるだろうと予想していた人は、当惑してしまったかもしれない。鹿島アントラーズが、チーム力の高さと冷酷なまでのプロ精神をまたも見せつけたからだ。
 中立の立場の観戦者ならレッズとその忠誠心に溢れたファンに対して同情したかもしれないが、あの決戦の日は鹿島のほうが明らかに上であった。

 アントラーズのブラジル人監督、トニーニョ・セレーゾは大きなリスクを覚悟の上で、直近の10月27日のコンサドーレ札幌とのリーグ戦に先発出場できなかった5人の選手を起用した。
 その5人とは、ライトバックの名良橋晃、ディフェンダーのファビアーノ、ミッドフィールダーの小笠原満男と本山雅志、そしてストライカーのエウレルである。
 試合前には、トニーニョは、まずチームの長所を可能な限り前面に押し出し、試合が進み、選手の疲労が顕著になると交代選手を送りだすという戦術をとるのだろうと思えた。
 だが、鹿島の先発メンバーは、本山がより守備的な内田潤と交代するまで、87分間持ちこたえた。さらに2分後には、エウレルに代えて長谷川祥之が送り込まれた。
 トニーニョの戦術は見事に機能し、経験豊かなアントラーズの選手たちは、爆発的な攻撃力を誇るレッズのコンビ、エメルソンとトゥットを封じ込めた。
 トゥットはできがあまり良くなく、秋田のミスによってもたらされた、浦和にとって願ってもない決定的チャンスを無駄にしてしまった。その一方で、鹿島はエメルソンのスピードに巧妙に対応した。
 追いつめられた浦和のオランダ人監督、ハンス・オフトは、78分過ぎにかつて鹿島に在籍していたディフェンダー・室井市衛をピッチに送りだし、パスを回すよりも空中戦で鹿島陣に攻撃を仕掛けることを決断した。
 これ以降、鹿島はリードを守りやすくなった。エメルソンにゴール前でボールが回らなくなったからだ。この時点では、エメルソンのスピードに疲労してきた鹿島ディフェンダーが苦労するようになっていたのである。

 鹿島が完ぺきなチーム・パフォーマンスを見せる。その典型は、中盤の中央での本田泰人と中田浩二のコンビネーションであった。
 本田と中田の二人はチームの動きを円滑に保ち、中盤でルーズボールを多く奪い、野心的なパスよりは主にイージーなパスを供給する。これには、ボールを長く保持しようという狙いがあるのだ。
 代表監督のジーコは、アルゼンチンを迎え撃つ11月20日の試合において、中盤の中央に相応しい選手は、チームにバランスとまとまりをもたらす中田浩二であるということをはっきりと理解しなければならない。
 小笠原は、試合の帰趨を決定する選手であることをまたも証明した。もっとも、この試合唯一のゴールとなった59分過ぎのシュートは、井原正巳の体にあたり大きく跳ね返ったものであった。
 小笠原は、クレバーで、意志が強く、自信に満ちた中盤のゲームメーカーであり、前の代表監督フィリップ・トルシエが高く評価した選手である。実際、トルシエはとても小笠原を好いており、来年、彼がヨーロッパのクラブを指揮するようになった時には、鹿島に対して小笠原と、そしておそらく中田の移籍を申し出ることが充分に予想される。
 二人の移籍は鹿島にとっては大きな損失であるが、このチームを見ていると、代わりの選手もすぐに見つかるかもしれないという気になる。

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