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2002年11月

FC東京の大ヒット、ジャーン

2002/11/28(木)

 FC東京はJ1でも指折りの安い予算でチームを運営しているため、新しい選手の獲得にさいしては、石橋を叩いて渡らなければならない。
 ブラジル人センターバック、ジャーンは、今シーズンのリーグでもっとも過小評価されていた選手の一人であった。
 リベロのサンドロの後任としてバイーアFCよりやって来た25歳のこの選手は、FC東京の青のユニフォームに袖を通し、見事なデビュー・シーズンを飾った。

 たとえば先週土曜日の東京スタジアム。ジャーンは東京ディフェンスの中心として見事なプレーを見せ、延長にもつれこんだ浦和戦での1−0の勝利に貢献した。
 浦和が誇るブラジル人ストライカー・コンビ、エメルソンとトゥットは、ジャーンと将来性豊かな21歳、茂庭のコンビが仕掛ける積極的な守備により、ゴールのチャンスを得ることがほとんどなかった。
 どのチームでもディフェンスの頑張りは攻撃陣にも伝わるもので、東京のフォワード、ミッドフィールダーもしっかりとしたチームプレーを見せ、36,000人以上の観客が見守るなかでエキサイティングな試合を演出した。
 ジャーンが何よりも満足したのは、東京のチームとしてのパフォーマンスであり、その次が、日本での最初のシーズンにおける自分のプレーであった。「最初は、チームに適応することだけを考えたんだ。そしてその次は、Jリーグに適応すること」ジャーンは謙虚である。
「日本での初めてのシーズンだったから、試合のたびに自分のプレーに集中しなければならなかった。みんながちゃんとプレーすれば、結果はついてくる。今年の東京は、そういうことなんだよ」

 セカンドステージ全15試合中14試合が終了した時点で、FC東京は4位に位置し、勝ち点は22。ジュビロ磐田との勝ち点差は10。ちなみに、ガンバ大阪が2位で勝ち点27、鹿島アントラーズが3位で勝ち点23である。
 最終節の土曜日、東京はアウエーで鹿島と対戦する。
「アウエーの最終戦も、勝つことが大切なんだ。できるだけ上の順位で終わりたいからね」とジャーン。
 将来については、こう語る。「チームには若い選手がたくさんいる。彼らも経験を積んで、うまくなっていくだろうね。」「最終的には、みんながそれぞれの力を伸ばすことができるだろう。」
「監督(原博実)は、しっかりしたディフェンスとカウンターアタックというコンセプトを持っているけど、今年はみんながこのコンセプトを守って、強いチームになろうとしているんだ。」「選手全員が監督のコンセプトを信じているから、ピッチでも良いプレーができるんだよ」

 12月16日の夜、毎年恒例のJリーグ・アウォーズでジャーンがベスト・イレブンに選ばれることはなさそうだが、彼がリーグでも屈指のディフェンダーであることは、FC東京のファンが知っている。
 それに、トゥットとエメルソンも知っている。

 

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高円宮さまの急逝:日本にとって大きな損失

2002/11/24(日)

 突然の高円宮さまのご逝去は、日本のサッカーにとってあまりにも大きな損失であったと、若かりし高円宮さまにサッカーの面白さを目覚めさせた男、岡野俊一郎氏はそう語った。
 日本サッカー協会の名誉総裁を1987年から務められていた高円宮さまは、木曜日にスカッシュをされている途中に心室細動のため、帰らぬ人となられた。
 しかしそれ以前から、高円宮さまはサッカーに興味を持っておられた。
 昨年12月に赤坂の高円宮邸においてインタビューした折に、高円宮さまは小学生時代に岡野氏の司会していた三菱ダイヤモンドサッカーを見ていた事を話された。
 スポーツをこよなく愛された高円宮さまは当時から、サッカーと言えば岡野氏だった。そして彼らは後々懇意になっていった。
「本当に日本のサッカーの為に尽くしてくださっていただけに、殿下のご逝去はショックです」。日本サッカー協会名誉会長の岡野氏はそう語った。
「殿下はサッカーのみならず、色々なスポーツに対して、また音楽や芸術に対しても造詣が深かった。文化やスポーツに対して非常に興味を持っておられた」
 また岡野氏は、高円宮さまが2002年ワールドカップ誘致のために、日本を訪れる貴人をお招きしたりと、たいへんなご尽力をされたと語った。

「ワールドカップ開催中、殿下は日本のサッカー関係者の誰よりも多い、実に19試合も観戦されました」
「私は18試合観戦しましたが、殿下のお隣に座らせていただく機会が多かったですね」
「大阪で観戦した日本対チュニジアの試合で日本が勝ちセカンドラウンド進出を決めた瞬間に、殿下は立ち上がり両手を突き上げ、2人で喜び合った事を今でも印象強く覚えています」
「ワールドカップ決勝戦では、殿下と私は天皇皇后両陛下、そして韓国の金大中大統領ご夫妻の後ろに座らせていただきました。大変光栄な事でした」

 高円宮さまは2002年のワールドカップを、日韓両国に理解と尊敬を深める良い機会になったと評した。
「このワールドカップで最も大切な事は、韓国と日本の両国が過去半世紀の間に歪められたその関係を修復する事です」
「両国にとって世界の中、アジアの中でお互いが等しく重要であるという事を理解する大きなチャンスなのです。我々が手に手をとって協力しながら、アジアの文化と経済を21世紀に伝えていかねばならないのです」
 高円宮さまを偲びつつ岡野氏は、「殿下には本当に色々な思い出があります。一緒にサッカーもしましたし、お話もよくさせていただきました。時には日本のサッカーの将来について真剣に話し合ったりもしたものです」
「殿下のご逝去は日本サッカー協会にとって、本当に大きな損失です」

  日本にとって、特に日本のサッカーにとって、ワールドカップ開催の年が非常に寂しく過ぎていこうとしている。
 高円宮さまのご尽力が日本のサッカーの発展に与えた影響は大きい。
 そして日本サッカーの発展に寄与した高円宮さまの役割は、決して忘れるべきではない。

 

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今も世界屈指の実力、アルゼンチン

2002/11/19(火)

 水曜日の夜、埼玉スタジアムで日本代表がアルゼンチンに対してどう戦うかが注目される。
 理論的には、日本代表はこれまで以上に堂々と、積極的にプレーすべきだということになる。
 なんと言っても、日本は6月のワールドカップでセカンド・ラウンドまで進出し、そしてまた今回もワールドカップの時と同じようなホームの大声援、大歓声のなかでプレーすることができる。さらに、母親の死去のためブラジルに帰国した代表監督、ジーコのためにも勝ちたいと、モチベーションはさらに高くなっているだろう。

 アルゼンチンはワールドカップではフランスと揃って敗れ去り、大波乱を巻き起こした。勝ったのは1−0のナイジェリア戦だけ、イングランドとの「大一番」に0−1で敗れ、ファースト・ラウンドで姿を消した。しかも、ワールドカップ以来初の試合となる今回は、準備もほとんどできていない。
 月曜日の夜、私は東京の西が丘サッカー場でアルゼンチンの公開練習を見た。グラウンドには、ゴールキーパー1人を含めて10人の選手しかおらず、トレーニングといえば、ジョッギング、ストレッチと、選手たちが小さな円を作ってボールを蹴りあうだけであった。
 そのうえ、パブロ・アイマールとファン・ロマン・リケルメがケガで欠場となれば、マルセロ・ビエルサ監督もチーム編成にはお手上げ状態であろう。

 結局、日本は攻めるのか、それともタレント揃いのアルゼンチン代表に用心してかかるのか?
 もし私が日本代表の監督なら(サッカー・ファンなら、誰だってこんなこと考えますよね?)、私は後者の方法を選ぶだろう。
 ワールドカップでは2ゴールしか奪えず敗退したとは言え、私はやはり、アルゼンチンは世界屈指の強豪チームだと思う。
 1994年のワールドカップでは、アルゼンチンは私にとってのベストチームであった。ディエゴ・マラドーナの薬物乱用問題がなければ、アルゼンチンが優勝していたかもしれない。
 98年大会では、セカンド・ラウンドでのイングランドとの激戦で疲れ切っていたアルゼンチンは、マルセイユでの準々決勝でデニス・ベルカンプに豪快なシュートを喫して敗れたが、あれはまさに不運であった。
 今年、アルゼンチンは見事な攻撃サッカーの片鱗を見せてくれた。しかし、バティステュータ、クレスポ、オルテガ、クラウディオ・ロペス、ベロン、アイマールら、豪華な攻撃陣が揃っていたにも関わらず、アルゼンチンはゴールを量産することがまったくできなかった。
 一方、失点もわずか2点−デビッド・ベッカムのペナルティー・キックとスウェーデンのアンドレス・スべンソンの見事なフリーキック−であり、ワールドカップの3試合をすべてケガで欠場していたキャプテン、リベロのロベルト・アジャラが復帰する今回は、ディフェンスはより一層強固になるだろう。

 ジーコの不在により山本昌邦コーチが指揮を執る日本代表は、今回は充分な組織力が必要であり、とりわけ福西崇史と中田浩二の守備的ミッドフィールダーがその中心とならなければならない。ただし、独特の存在感を誇り、チームのなだめ役にもなる、中田英寿、小野伸二、稲本潤一らがいないのは、選手たちにとってはキツいかもしれない。
 日本は負けを回避しようとするだろう。引き分けは日本にとっては上出来であるが、アルゼンチンにとっては満足できるものではないだろう。このあたりは、1年前に同じ場所で戦い、プライドを傷つけられることなくハッピーな気分で帰国したイタリア代表とは事情が違う。
 アルゼンチンは実力を誇示する必要がある。つまり、日本にとっては非常に難しい試合になるのである。

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高原は小野を追ってオランダへ行くべきだ

2002/11/18(月)

 日本のトップストライカー・高原直泰は、小野伸二を見習ってオランダへ行くべきだというアドバイスを受けたという。
 23歳のFWは今シーズン、ジュビロ磐田で24ゴールをあげ(11月10日・セカンドステージ第12節終了時点)、ファーストステージのMVPに選出された。
 彼の代理人が、この冬のイタリアもしくはイングランドへの移籍に向けて準備を始めているとの噂もある。
 しかし、彼のチームメートでオランダ人のアルノ・ヴァン・ズアムは、高原にとってはオランダへ移籍する方が良いのではないかと考えている。

「彼はまだ23歳だし、毎週プレーするべきだよ。ベンチに座っているべきじゃない。」セカンドステージで控えに回されてしまったGKはそう語った。
「僕には彼がイングランド向きとは思えない。もしイングランドに行けば、稲本のように1年間をベンチで無駄に過ごす事になるんじゃないかと思うんだ」
「さらにはポーツマスで全くプレーできない川口のように、日本代表の座まで失う事にもなりかねない」
ヴァン・ズアムは高原にオランダリーグに行くよう勧めたと言う。「オランダリーグでなら彼は毎週プレーできると思うし、それが一番良いと思うよ」
「小野を見てくれよ。彼はフェイエノールト移籍1年目でUEFAカップに優勝し、今じゃ彼を知らない人間なんていないじゃないか」
「高原も1年か2年オランダでプレーし、それからスペインかイタリアへ移籍すれば良い。それでも彼はまだ25歳だし、まだまだ長いキャリアが待っているさ」
「海外移籍のタイミングはまさに今だよ。ただし、今度は南米じゃなくヨーロッパへね。絶対に行くべきだと思うよ」

 アルゼンチンのボカ・ジュニアーズでの得点はわずか1、決して満足したプレーではなかった。さらにはエコノミー症候群による肺動脈血栓塞栓(そくせん)症でワールドカップ出場も棒に振った。
 しかし、今やそれらの逆境をはねのけ、Jリーグの得点王になりチームメートの藤田俊哉と並んでシーズンMVP争いをしている。

 一方エバートンでは、アジアからのプレーヤーを受け入れるに十分な準備が整っている。マーシーサイドにあるこのクラブには、MF李鉄(リ・ティエ)、DF李偉鋒(リ・ウェイフェン)、2人のワールドカップ中国代表メンバーが既に在籍している。
 ただ、エバートンには17歳のワンダーボーイ、ワイン・ローニー、カナダ人のトーマス・ラジンスキー、そしてケビン・キャンベルの3人のストライカーがいる。
 したがって高原が毎週プレーするのは難しいだろう。

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またも驚きのジーコ流

2002/11/14(木)

 ジーコが選んだ選手の顔ぶれと彼の手法には、本当に驚くばかりだ。
 月曜日の午後、私は東京で開かれたジーコの記者会見に出席していたのだが、全くわけが分からなくなってしまった。
 まず、ジャマイカ戦の前と同じように、11月20日のアルゼンチンとの親善試合の先発メンバーを発表したことに仰天した。
 代表チーム監督はたいてい、試合の当日まで先発メンバーの発表はしないものだ。
 それには、相手チームを疑心暗鬼にさせておくという意味合いもある。
 さらに、選手の気を引き締めるだけでなく、やる気と、自らがチームの一員であるという意識を保たせるという意味合いもある。
 ジーコが先発メンバーを発表してしまったあとでは、選手たちは練習、調整に熱が入らないようになるかもしれない。
 たとえば、坪井慶介、遠藤保仁という2人の前途有望な若手選手は、すでに自分たちが試合の先発メンバーからはずれることを知っている。
 このことは、練習に臨む2人の姿勢に影響しないのだろうか?
 もし自分たちがスタメンに入るかもしれないと思うと、調整にも、より一層やる気が出るというものだ。スタメンに入るチャンスがあると思って練習したときよりも、現在は動きに溌剌さが欠けるかもしれない。

 もちろん、ジーコがこんなに早く先発メンバーを発表してくれてメディアは大歓迎だろうが、それは監督がわざわざすべきことでもない。
 アルゼンチンの監督、マルセロ・ビエルサにとってもこの発表は大歓迎だろう。相手に合わせて先発メンバーを選べばいいからだ。
 アルゼンチンの選手たちのレベルの高さを見れば、ビエルサが攻撃的な布陣を組んでくるのはまず間違いないだろう。ビエルサのチームは脅威であり、埼玉スタジアムの試合でアルゼンチンを封じるためには、日本はモチベーションを高くし、戦術上の規律を強く保たなければならない。

 選手選考の面では、29歳の中西永輔の再招集は、典型的なフルバック・タイプの選手が不足している日本の現状を際立たせる結果となった。日本では、多くのチームが4−4−2より3−5−2の布陣を採用しているからだ。
 1998年ワールドカップ・フランス大会のアルゼンチン戦、岡田武史監督が採用した3バックで中央の井原正巳、左側の秋田豊と並んで右側を守った中西は、見事な働きを見せた。 中西がクラウディオ・ロペスをマークして、何も仕事をさせなかったのを今も憶えているが、あれは素晴らしい活躍ぶりであった。
 ジェフにおいては、中西は3バックのディフェンスのどの位置も守ることができる。しかし、繰り返すが、中西は3バックでプレーしているのであり、オーソドックスなフルバックの選手ではない。本来右利きである中西の、左サイドでのプレーを見るのは、興味深いものとなるだろう。

 さらに私は、ジーコがなぜ上野良治を招集したのかも理解できない。守備的ミッドフィールダーに福西崇史と中田浩二の2人を起用しようとしているのなら、なおさらである。
 上野をスタメンで使う気がないのなら、代表チームにいるだけでもさまざまな経験を積むことのできる、阿部勇樹のような若手を抜擢したほうが良かったのではないか、と私は思った。
 とはいえ、ジーコが守備的ミッドフィールダーを二人配するというのは好ましい兆候である。ジーコの代表監督デビュー戦では、この部分が弱くてジャマイカにつけ込まれていたからだ。
 日本代表のフォワードは強力に見えるが、ゴール前でチャンスを掴んだ時には思いきり良くプレーしなければならないだろう。
 気迫に満ちたアルゼンチンとの試合は日本代表にはとても厳しいものになるだろうが、ジーコにとっても監督としての技量が問われる厳しいテストの場となるだろう。

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危機に直面するサンフレッチェ

2002/11/10(日)

 Jリーグもあと4節を残し、サンフレッチェ広島はJ2落ちの深刻な危機を迎えている。
 コンサドーレ札幌は勝ち点10ですでにJ2降格が決定しているが、30試合中26試合を終えて、勝ち点19のサンフレッチェはヴィッセル神戸と柏レイソルに7点差をつけられ、ほぼ降格が決まったようなものだ。
 シーズン終了を控え、最大でも12点しか得ることができないなか、7点差を縮めるのはかなり難しい。
 したがって、今週の試合はサンフレッチェにとってリーグ残留をかけた最後の正念場だ。
 土曜日に彼らはホームで出場停止のプレイメーカー、アリソンを欠くヴィッセル神戸と戦う。そして翌日曜にはレイソルがジュビロ磐田と、やはり出場停止の明神智和、根引謙介、そして平山智規のトリオ抜きで戦わなければならない。
 サンフレッチェにとっては、Jリーグ発足以来守ってきたJ1の地位をかけ、これらの2チームとの差を縮める大きなチャンスである。

 サンフレッチェの危機はシーズンが始まる以前に始まっていたと私は思う。
 外国人選手の獲得にも出遅れ、結局チームの戦力となれたのはカメルーンの大型DFビロングのみだ。
 若いDFトゥーリオ・タナカも外国人選手として登録されているが、チームの骨組みを支えるには外国人選手の補強が十分ではなかった。
 ジュビロ磐田は、良い日本人選手が揃っていれば外国人選手の補強は必要がないという事を証明してみせたが、サンフレッチェは残念ながらジュビロにすべての面で劣っている。

 今シーズンのサンフレチェの選手補強面での失敗は、彼らにとって貴重な体験になるはずだ。
 サンフレッチェの降格を見るのは非常に寂しい。
 彼らはいつも技術面、戦術面で素晴らしいサッカーを見せてくれてきた。
 久保竜彦は今シーズン不調でわずか6ゴールしかあげていないが、それでもアグレッシブなセンターフォワードだ。私は今でも彼をワールドカップ代表に選ばなかったのはフィリップ・トルシエのミスだと思っている。
 私なら西沢明訓の代わりに違ったタイプの久保を選んでいただろう。 そしてきっと彼はトルコ戦で役に立った筈だと思う。
 クレバーで目を引くプレーでヨーロッパの注目を浴びた藤本主税も素晴らしいと思う。
 釜山アジア大会で負傷した青木剛に代わってチームキャプテンを引き継いだ若きMF森崎和幸やウィングバック、駒野友一もまたチームの一員である。

 サンフレッチェは今シーズン怪我に泣かされてきた。特にシーズンが始まったばかりでのDF上村健一の怪我が大きく響いた。しかし、怪我もまたサッカーというスポーツの一面であり、だからこそピッチでは強いチームと強いリーダーシップを持つことが重要なのだ。
 今週、チームスタッフの一人と話をした。彼はこれまでのシーズンは、チームが不調でも何とか選手たちがこらえてきたが、今回は徐々にJ2降格への不安が選手たちの間に広がってきていると話した。
 いまだかつてJ2への降格争いをサンフレッチェが戦うことになるとは誰も考えてこなかったが、突如として目の前に突きつけられたのだ。
 しかしそれが現実だ。
 すべては先シーズンが終わった時点で始まっていた。先にも述べたが、今シーズンを戦うための補強に出遅れたのだ。
 チームはまさにそれが原因で今苦しんでいるのだ。

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またも見せつけた、アントラーズのプロ精神

2002/11/07(木)

 試合前の話題は、カップ戦の決勝初登場の浦和レッズばかりに集中していた。
 しかし、ナビスコ・カップがロマンチックな結末を迎えるだろうと予想していた人は、当惑してしまったかもしれない。鹿島アントラーズが、チーム力の高さと冷酷なまでのプロ精神をまたも見せつけたからだ。
 中立の立場の観戦者ならレッズとその忠誠心に溢れたファンに対して同情したかもしれないが、あの決戦の日は鹿島のほうが明らかに上であった。

 アントラーズのブラジル人監督、トニーニョ・セレーゾは大きなリスクを覚悟の上で、直近の10月27日のコンサドーレ札幌とのリーグ戦に先発出場できなかった5人の選手を起用した。
 その5人とは、ライトバックの名良橋晃、ディフェンダーのファビアーノ、ミッドフィールダーの小笠原満男と本山雅志、そしてストライカーのエウレルである。
 試合前には、トニーニョは、まずチームの長所を可能な限り前面に押し出し、試合が進み、選手の疲労が顕著になると交代選手を送りだすという戦術をとるのだろうと思えた。
 だが、鹿島の先発メンバーは、本山がより守備的な内田潤と交代するまで、87分間持ちこたえた。さらに2分後には、エウレルに代えて長谷川祥之が送り込まれた。
 トニーニョの戦術は見事に機能し、経験豊かなアントラーズの選手たちは、爆発的な攻撃力を誇るレッズのコンビ、エメルソンとトゥットを封じ込めた。
 トゥットはできがあまり良くなく、秋田のミスによってもたらされた、浦和にとって願ってもない決定的チャンスを無駄にしてしまった。その一方で、鹿島はエメルソンのスピードに巧妙に対応した。
 追いつめられた浦和のオランダ人監督、ハンス・オフトは、78分過ぎにかつて鹿島に在籍していたディフェンダー・室井市衛をピッチに送りだし、パスを回すよりも空中戦で鹿島陣に攻撃を仕掛けることを決断した。
 これ以降、鹿島はリードを守りやすくなった。エメルソンにゴール前でボールが回らなくなったからだ。この時点では、エメルソンのスピードに疲労してきた鹿島ディフェンダーが苦労するようになっていたのである。

 鹿島が完ぺきなチーム・パフォーマンスを見せる。その典型は、中盤の中央での本田泰人と中田浩二のコンビネーションであった。
 本田と中田の二人はチームの動きを円滑に保ち、中盤でルーズボールを多く奪い、野心的なパスよりは主にイージーなパスを供給する。これには、ボールを長く保持しようという狙いがあるのだ。
 代表監督のジーコは、アルゼンチンを迎え撃つ11月20日の試合において、中盤の中央に相応しい選手は、チームにバランスとまとまりをもたらす中田浩二であるということをはっきりと理解しなければならない。
 小笠原は、試合の帰趨を決定する選手であることをまたも証明した。もっとも、この試合唯一のゴールとなった59分過ぎのシュートは、井原正巳の体にあたり大きく跳ね返ったものであった。
 小笠原は、クレバーで、意志が強く、自信に満ちた中盤のゲームメーカーであり、前の代表監督フィリップ・トルシエが高く評価した選手である。実際、トルシエはとても小笠原を好いており、来年、彼がヨーロッパのクラブを指揮するようになった時には、鹿島に対して小笠原と、そしておそらく中田の移籍を申し出ることが充分に予想される。
 二人の移籍は鹿島にとっては大きな損失であるが、このチームを見ていると、代わりの選手もすぐに見つかるかもしれないという気になる。

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「エメルソンが日本に与える困惑(9/16)」について

2002/11/05(火)

 私の記事は、「Daily Yomiuri」で読んだエメルソンのインタビュー記事をもとに書いています。
 また、その記事のライターとも詳細について話しもしました。もし、エメルソンが過去にブラジル代表でプレーしていたことが理由で、日本代表としてプレーする資格がないというのであれば、もちろん彼自身がそのことについて知っていたのではないでしょうか?
 私は、U−21まで代表でプレーしていた選手は、他国のためにプレーすることができないと解釈しています。エメルソンはU−21、もしくはユースでプレーしていたのでしょうか?しかし、もしユースチームでプレーしていたとしても、彼は日本代表でプレーする資格はあります。

 例えばライアン・ギグスのように。
 ライアン・ギグスは、ライアン・ウイルソンの名前でイングランド・スクールボーイズのためにプレーし、両親の離婚後、母方の姓をとってライアン・ギグスになったということを、皆さんはご存知ですか?彼は父親を責めるため母方の国籍を選び、イングランドではなくウェールズのためにプレーしたのです。

 私の論点は、以下のとおりです。
 アレックスのように、プレーヤー自身が信念を持って日本にきて、帰化する権利を得るのであれば、何の問題もありません。私が言いたかったことは、日本がブラジル選手を連れてきて、日本代表でプレーできるよう、すぐに彼等に市民権を与えるようになってしまうのは間違っているということです。そうした行いをすれば、日本はアイデンティティーを失うことになるのではないでしょうか。

 また、コンサドーレは本当にエメルソンを残留させたかった。このことは岡田武史・元監督が私に直接話してくれました。ただ、本当に素晴らしい活躍をみせたシーズンの後であったため、エメルソンの年棒の要求額もかなり大きく、コンサドーレは要求をのむことができなかったのです。
 私もエメルソンのバックグラウンドについては確認しなければなりません。しかし、日本代表としてプレーする資格があるかどうかを知っているのか、彼のコメントを読む限りでは、彼は明らかに自分には資格があると考えているように思えます。

 とにかく、こんなにたくさんの皆さんの意見を聞けたことが嬉しい!

 Best wishes, Jeremy Walker

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不安をつのらせるエスパルスの“エアーバロン”

2002/11/03(日)

 エスパルスの“空の男爵”は今シーズンのほとんどをサイドラインに取り残され、選手生活を清水以外に求めることを考えている。
 身長186cmのブラジル人センターフォワードはジェフ市原で2年、そしてエスパルスで2年の過去2シーズンにわたって空中戦の強さを証明してきた。
 しかしエスパルスのユーゴスラビア人監督、スドラヴコ・ゼムノヴィッチはバロンのヘディング力は清水のゲームプランには必要ないものと思っている。
 監督が望むのは、むしろ慎重で、ボール回しを多用するパッシング・ゲームである。バロンを中心に攻撃を組み立てるとなると、この長身のバロンをめがけてロングボールを上げることを他のプレーヤーに強いることになり、エスパルスのアイデンティティーを失うことになる。
 これがゼムノヴィッチの考えなのだが、バロンは当然これには納得していない。

 1999年以来、111試合で51得点を挙げてきた28歳のストライカーには、彼が攻撃の中心となれないことがまったく納得いかないのだ。
 事実、左に三都主アレサンドロ、そして右に安貞桓を配置すれば、スピード、技術そして空中戦の強さと、完璧なコンビネーションになると信じている。
「試合に出られないのは本当に辛いよ。これまでの僕の選手生活の中でこんなに長くベンチに座っているのは初めてだしね」今週の柏戦、0−1の敗戦でわずか5分の途中出場した後、彼はそう語った。
「できるだけ前向きに考えようと、これもまた良い経験なんだと思おうとはしているんだけど、なかなか難しいね」彼は正直な気持ちを語った。「僕の後ろに2人をおいた3トップが一番うまくいくと思うんだけどな」

バロンはこの先どうなるのか、最悪の場合を想定して準備を始めた。
「契約の話は11月末から始まるけれど、それまでは来季も契約するかどうか決まらないからね」
「現段階では僕はチームの一員だとは言えないよ。だからチームがどう考えているかわからないね。来シーズンは僕と契約しないかもしれないね」
 もしエスパルスがバロンの放出を決めても、バロンは遠くへ行く気はない。
「日本に残れれば良いなと思ってるよ」彼は言う。
 彼の得点力そして日本語とJリーグに対する知識に併せ、ヘディング能力と空中戦の強さは、オールドファッションとは言え、まだまだ役に立つのではないだろうか。

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