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天性のリーダー、阿部

2002/10/13(日)

 日本の若きライオンたちは、目に見えて成長している。チームはアジア大会を勝ち抜き、ついに日曜日の決勝まで進出した。
 なかでも、阿部勇樹の成長ぶりが目を引く。
 ジェフ市原所属の21歳の選手は、稲本潤一と似たようなプレー・スタイルで、Jリーグでは中央のミッドフィールダーとして注目を集めていた。
 しかしここプサンで阿部は、キャプテンでリベロの青木剛の代役を務めている。先週の土曜日、激しい戦いの末ウズベキスタンを1−0で破った試合で青木が負傷したからだ。

 準々決勝の中国戦(1−0)、準決勝のタイ戦(3−0)で、日本はただ1つのゴールも許さなかった。
 これは、優れたチーム・ディフェンスに負うものである。日本チームのディフェンスは、フォワードが相手ディフェンダーにプレッシャーを与え、ミッドフィールダーがボールを奪いやすくすることから始まる。ボールを奪う役割に特に秀でていたのが鈴木啓太で、タイ戦での試合を決定づけた見事なゴールはまさにこのようなディフェンスから生まれたものであった。
 ただし、鈴木はリーダーではない。少なくとも、今のところは。

 しかし、バックラインでは、瞬く間に阿部が自然とチームを鼓舞するリーダーとなった。
 タイ戦で、阿部は日本のベスト・プレーヤーであった。集中力を保ち続け、試合の序盤ではチームメートの何気ないプレーにも指示を与えていた。
 中盤で三田光がボールを奪われた時も、阿部は見事なタイミングのタックルでカバーし、窮地を救った。
 後半もタイが攻勢を続けたが、阿部は空中戦でも強いところを見せつけ、ペナルティーエリア内外の重要な位置での競り合いにも多くの勝利をおさめた。

 ウズベキスタン戦の後、私はアジア・サッカー連盟の技術委員会の一員である、カ・コクミン氏と話す機会を得た。氏は、元香港代表監督であり、コーチのサークルで高く尊敬されている人物である。
 カ・コクミン氏は日本チームの技術と組織力を評価したが、日本にはピッチでのリーダーがおらず、大会が進むにつれ重大な問題になるかもしれないと述べた。
 実際、タイ戦において、タイの選手たちが絶えずお互いを鼓舞しあっていたのに対して、日本の選手は長い間声が出ないことがあった。
 ウルサン・ムンス・サッカー競技場はほとんどガラガラだったので、フィールドの声も良く聞こえる。
 日本の側に立ってみると、声が聞こえることはあまり多くはなかった。声のほとんどは、タイの選手たちが発したものであった。

 フィリップ・トルシエは、チーム内での会話とコミュニケーションの欠如についていつも語っていた。練習中に雰囲気が暗くなると、怒鳴り合ったり、話し合ったりするように、しょっちゅう選手たちを鼓舞していたものだ。
 コミュニケーションはサッカーでは重要な要素であり、この点に関しては日本チームの若者たちにはまだまだ学習すべきことがある。
 ただし、リーダーになれる人物としては、阿部がいる。ディフェンス中央での阿部の存在感は、何ものにも換えがたいものであった。

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