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イングランド・ファンも変らなきゃ

2002/06/10(月)

 今回のワールドカップでは、ドキッとすることやビックリすることがいくつかある。
 おそらく、そのなかでも最大のものは、イングランド・サポーターの振る舞いだろう。
 彼らは見事である。数の多さでも、醸し出す雰囲気でも、全来訪国のなかで最高である。

 12月1日のプサンでワールドカップの抽選会が行われ、イングランドが日本でプレーすることが決まってからというもの、日本のメディアはフーリガンの話題でもちきりだった。
 大げさに煽り立てるばかりで、そこに内包される問題を理解しようともしない日本のメディアは、普通の日本人を心底怖れさせてくれた。
 そのような観点から見れば、メディアはがっかりし、人々は困惑し、同時に喜びもした。

 金曜日の夜、札幌ドームでのイングランド・アルゼンチン戦のあと、私は2時間ほど繁華街を散歩してみた。
 その光景は、信じられなかった。
 バス停からホテルに向かって歩いていると、遠くの方から大騒ぎの声が聞こえてきた。
「やれやれ」と私は思った。「イングランドのファンが集まって、騒いでいるんだ」
 飛び跳ねて騒いでいる群衆に近づいてみると、ほとんどが日本人であったので、私はほっとした。

 札幌ドームでは、3万5千人の観客のうちの1万人がイングランドのファンで、応援のすこしずつ熱気を帯びていった。
 しかし、ベッカムやオーウェンのユニフォームを着た日本人のファンも1万人くらいいて、イングランドの応援歌に合わせて、礼儀正しく手を叩いていた。
 件の繁華街で、大声を出しているのは日本人の若者たちである。
 若者たちはあちこちで飛び跳ね、歌を歌い、楽しんでいた。イングランドのファンはちょうど彼らの輪の中にいる。イングランドのファンが日本人と一緒に歌い、声援は「イングランド」から「ニッポン」に変った。
 すでに午前3時であったが、街路はファンと、勝利を祝う様子を見物する地元の人たちで一杯になっていた。

 心配そうにしているのは、地元の警察だけであった。警察の挑戦的な態度には、まさに寛容さと忍耐が必要であった。
 警察はファンのグループを取り囲み、懐中電灯を高く振りかざして、盛り上がっている人々を狭いエリアに閉じこめようとしていた。彼らがパニックに陥っているのは、目を見ればわかった。
 つまり、自国の若者たちがその感情をほとばしらせ、彼らにとっては脅威でしかないイングランドのファンと一緒に勝利を祝っているのを見るのは、警察にとっては、相当なワールドカップ・ショックであったわけだ。

 日本への旅費と付随する滞在費、それに英国政府が犯罪歴のあるトラブル・メーカー1000人以上に対して、ワールドカップ期間中の出国を許さないという対策をとったことが、それぞれフーリガンを遠ざける効果をもたらした。
 同時に、イングランドのファンも自主的なルールを作り、パーティーを台なしにするような連中は相手にしないようにしている。

 今後の3週間、ピッチではなにが起きるかわからないが、札幌での光景は、いつまでも素敵な思い出となって残るだろう。イングランドが国外でプレーするときはいつもこうであって欲しいし、これが新しい、脱フーリガン時代の幕開けとなればいいと思う。

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