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「ヒディンク症候群」に溢れる韓国

2002/06/17(月)

 日本ではトルシエ株が急上昇しているらしい。しかし、韓国でのフース・ヒディンクのそれには比べるまでもない。
 いまや韓国全土のあらゆる新聞、そしてテレビにこのオランダ人監督の現れない日はないとさえ思える。
 彼は韓国代表チームをワールドカップ史上初の勝利、そしてさらにはベスト16に導いた。そしてそれは、韓国の人々にとって単なるスポーツでの成功ではないのだ。
 彼らが過去のワールドカップで背負ってきたコンプレックスを吹き飛ばし、韓国に国家の威信と誇りを取り戻してくれたのだ。

 例えば、英字新聞の「Korean Times」日曜版の社説欄に目を通してみると、「世界の他の国の人々には、200万人以上もの人々が街に溢れ大スクリーンの前で心を一つにし、熱狂的に代表チームを応援している様子が想像できるだろうか」
「代表チームの偉業は単にサッカーでの勝利というだけでなく、我々の国際的威信と国民の自信と士気を世界に示すことなのだ」
 この力に溢れた言葉は、まぎれもなくこれまで5回のワールドカップに出場し引き分け4、敗戦10のあの韓国から発せられた言葉なのだ。
 まさに韓国は「ヒディンク症候群」で溢れている。

 国民の中には、韓国代表がポーランド代表相手に歴史的な勝利をおさめた6月4日を祭日にしようとする声もあり、またその会場だった釜山スタジアムを「釜山ヒディンクスタジアム」と改称するという報道もあった。
 いまや彼は韓国全土、全ての女性の憧れの男性となり、街には「ヒディンク人形」やTシャツがいたるところで売られている。

 思えば、ヒディンクが解雇の危機にさらされたのはそれほど昔の話ではない。
 今年初めにロサンゼルスで行われた北中米カリブ海サッカー連盟のゴールドカップで韓国代表は散々な成績だった。そして韓国メディアのほとんどが代表監督の解雇を叫んだのだ。そう、まるでトルシエが日本のメディアの総攻撃を受けた2002年春のように。

 しかし、この2人の監督は地道にしかし確固とした歩みでチームを率いてきた。
 選手達に自己表現力と自信を持ち、ポジティブであれと指導する以前にそれぞれの文化をも相手に戦わなければならなかった彼らの道は険しいものだっただろう。
 いまや、国民、選手のみならず、あれだけ批判を繰り広げていたメディアまでがヒディンンクやトルシエは間違っていなかったと言う。

 ワールドカップが白熱していく中、この二つの共催国がたとえ敗れ去ったとしてもこの極東の国々にとってはすべてが始まったばかりなのだ。

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