皆さんにはワールドカップ準決勝、対トルコ戦でのロナウドの素晴らしい決勝ゴールシーンで何が起こったのか見えただろうか?
私には見えなかったし、きっとトルコ代表GKリュストゥ・レチベルにも何が起こったのか見えなかったに違いない。
ロナウドがMFジウベルト・シウバからパスを受けた時、そのポジションからはシュートを打つのは難しいように見えた。
彼はペナルティーエリアの外に居たし、彼の前にはトルコチームの半数のプレーヤーが居た。
しかし、ディフェンス陣は彼に突破を図るのに充分なスペースを与え、4人のディフェンダー達が今にもタックルをしようとしていた。
次の瞬間、突如ボールがどこからともなくゴールネットを揺らしたのだ。
彼の右足はほとんど後ろに振り上げられることがないまま、つま先だけでファーサイドに向かってボールを突き刺したのは見事だった。
キーパーはなんとかボールに触る事はできたが、ファーコーナーにボールが吸い込まれるのを防ぐ事はできなかった。
それはディフェンダーをかわし、GKを1対1で破って決めるいつもの彼のようなシュートではなかった。
どちらかと言えば、ここ2大会では代表に選ばれていないが、1994年のワールドカップでブラジルを優勝に導いたスター、「ペナルティーエリアの狩人」ロマーリオのようなシュートだった。
しかし、これは代表監督ルイス・フェリペ・スコラーリの選択が正しかった事を証明した。
ロナウド、リバウド、そしてイングランド戦での警告で準決勝には出られなかったロナウジーニョの3人がいればブラジルにはロマーリオは必要ない。
トルコ戦での彼のゴールはまぎれもなく、ずば抜けた予測不能な技術で接戦をものにする事のできる真の天才のなせる技だった。
それはまさしく独創的で、突飛でもあり、いやこれこそロナウドなのだ。
ファーストラウンドを日本で観戦し、セカンドラウンド、準々決勝、準決勝と韓国で観戦した私にはこれが今大会ブラジルを見る初めての機会だった。
魅力的ではあるが、ここ一番の決定力にやや欠けるトルコ戦での僅差での辛勝は、私にとっては少しも不満を抱かせるものではなかった。
試合後のミックスゾーン(ロッカールームからバスへ向かう途中に設置されたインタビューエリア)でロナウドは自身のゴールを「ロマーリオ・スペシャル」と表現し、ようやく悪夢から解放されたと語った。
その悪夢は1998年のワールドカップ・フランス大会で膝の故障に加え、引きつけの発作を起こしその後不調に陥った事に始まった。
「今じゃ全てのゴールが勝利さ」
「ピッチに入る事がこれほど光栄で喜ばしい事はないよ」彼は語った。
今の彼に4年前のような、弾けた、爆発的でダイナミックな姿はないかもしれない。しかし25才になったこのスーパースター今大会でブラジルを優勝に導き、自身も得点王に輝く力を充分持っている。
彼はすでにワールドカップで通算10ゴールをあげている。この数字はかの伝説のプレーヤー、ペレが1958年〜1970年にあげた12ゴールに2ゴール足りないだけである。
ロナウドもまた伝説として語り継がれるプレーヤーになるのだろうか?
もし日曜日に行われるドイツとの決勝戦で彼が2ゴールをあげ、ブラジルを優勝に導いた時、彼の名は間違いなくワールドカップの歴史にその名を刻む事になるだろう。
彼にとってピッチに入る事は栄誉と喜びであるとしたら、我々にとってもピッチに入る彼を見る事は等しく栄誉であり喜びである。
もちろんそれはドイツ人であったとしても等しく感じる事だろう。