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高原には、グッドタイミング

2002/02/07(木)

 1年間のレンタル契約の半ばで日本人ストライカー高原直泰を手放すことにしたボカ・ジュニオルスの決定は、高原にとっても、代表チームにとっても、完ぺきなタイミングであった。

 昨年の夏、Jリーグ・ファーストステージの終了後、高原がジュビロ磐田を去り、ブエノス・アイレスに移る決心をしたのには、本当に驚いた。
 ジュビロ側の情報によれば、ヨーロッパのチームからのオファーもあったが、高原が選んだのは、通常は才能豊かな選手の輸入国というよりは輸出国であるアルゼンチン。

 その当時のボカの監督カルロス・ビアンチは、契約交渉を進める前に日本代表のフランス人監督、フィリップ・トルシエにも相談をしており、高原が入ってもボカの攻撃陣は強化されないということがすぐに明らかになった。
 もっとも、高原を入団させたのは日本のファンやテレビ局から金を儲ける方策の一つに過ぎないという、辛口評論家の見解も誤りであることもわかった。バイエルン・ミュンヘンとボカが戦う、トヨタ・カップの東京遠征のメンバーにも高原は選ばれなかったからだ。

 確かに、高原のシャツを売り、ボカの若きストライカーとなった高原を東京のファンにお披露目すれば、ボカにとっては格好の商売となったはずだ。
 高原がトヨタ・カップの遠征メンバーに選ばれなかったという事実は、高原は商売の道具としてではなく、純粋にサッカー選手としての能力を買われてボカと契約したことを証明するものであり、いままでの海外移籍の流れとは違うものであった。

 ただ、気がかりなのは、高原がボカで結果を残すことができなかったことと、なにもかもがアルゼンチンの絶望的な財政状況によるものだと高原が思い込んでしまわないかということだ。
 高原は不満を口にすべきではない。トルシエも同様だ。

 少なくとも現在は、高原は慣れた環境でトレーニングすることができるし、代表候補の合宿にも参加することができる。また、3月2日のJリーグの開幕には、ペナルティー・ボックスで名人芸を発揮する中山雅史ともコンビを組むことができる。
 ボールから離れた位置で精力的に動き回る高原と独特のゴール感覚と勇気を持つ中山。コンビとして、二人は見事に機能する。

 高原は海外でのプレーを目指したものの、今回は失敗した。しかし、問題とすべきは、彼の能力の欠如ではなく、アルゼンチンへの移籍を勧めるような、ひどいアドバイスがあったことかもしれない。

 高原は今でも、ゴールするコツを知っている、強くて速い、素晴らしいストライカーである。そして日本がすべきことは、彼が帰ってきたことを祝福して、ワールドカップでフル出場できるような調子に戻っているように希望することである。
 ただし、彼が自信を失っていないかどうかはまだわからない。
 ストライカーには、これがいちばん重要な問題である。

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