西澤の移籍で明らかになった問題点
西澤明訓がプレミアリーグで成功できなかった事実は、彼をよく知る者にとっては最初からわかりきっていた事ではあった。
ただ、残念な事にそれに気づかなかったボルトン・ワンダラーズは大きな代償を支払う事となった。
一方、西澤は来シーズン、J2のセレッソ大阪に戻り、森島寛晃と再びコンビを組む。思えば昨年の8月、西澤がボルトンにレンタル移籍をした際のボルトンのコメントに多くのサッカー関係者は驚かされた。
ボルトンの監督、サム・アラダイスは西澤の日本代表としての国際経験と、スペインリーグのエスパニョールでのプレーについて述べたものの、実際にはビデオで見ただけだと認めた。ましてや、西澤が充分な働きができなかった事については知る由もなかっただろう。
マーケティング担当者は西澤の日本での人気の高さに注目したようだが、それは他の海外でプレーする日本人選手、中田英寿、稲本潤一、そして川口能活に遠く及ばないものだ。そしてボルトン・イブニング・ニュースでさえ西澤の事をクラブにとって金の卵を生む鶏として紹介していた。
仮にボルトンの狙いがシャツの売り上げ、テレビの放映権、そしてその他諸々の副産物に期待していたのだとしたら、彼らの期待は大きく外れたという事だろう。いや、彼らこそこの契約での一番の敗者だ。
西澤にとって最大の問題点は、皮肉にも彼が2000年の6月の対フランス戦、2−2の引き分けの試合で決めた素晴らしいゴールにある。フランスと言えば、1998年ワールドカップ優勝に加えて、ユーロ2000のタイトルも手中にした世界最強チームだ。
そのフランス相手に、左サイドから三浦淳宏が敵陣深くにクロスを上げ、ボールに合わせて走りこんだ西澤が右足ボレーをたたき込んだのだ。ボールは呆然とするファビアン・バルテズの守るゴールの隅に吸い込まれた。
それはまさに素晴らしいシュートだった。もしワールドカップ中でのシュートであったなら、それこそテレビで何度も何度もリプレイを見るようなシュートだった。
セレッソでも西澤はいくつもの素晴らしいゴールを決めている。そして、代理人達にとって、西澤のゴールシーンを集めたビデオを作る事は西澤を売り込む為には当然な事である。
エスパニョールもボルトンも悪く言えばそれに引っかかったのだ。但し、彼らは西澤の技術的、そして精神的な欠陥に気づくのも早かった。
そんな中、唯一西澤を買っている人物がいる。それは日本代表監督のフィリップ・トルシエだ。トルシエは西澤の練習態度に我慢できず、1998年ワールドカップ代表メンバーから外した岡田武史前監督と違って、1月21日からの鹿児島でのキャンプで彼にチャンスを与える。
西澤には、彼の名前だけが海外で一人歩きしている事について何の責任もない。そしてもちろん、彼が海外での評判通りの選手でない事も彼の責任ではないのだ。
じゃあ。誰の責任なのか…。ジャパンマネーでの一稼ぎをもくろむヨーロッパのチームの責任だろう。
この不幸な問題点から皆が何かを学ぶ事を望んでやまない。
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