ピッチを去るモットラム
鹿島アントラーズの小笠原満男の素晴らしいフリーキックがジュビロ磐田のゴールネットを揺らし、ジュビロ磐田のシーズンが終わった。
そしてそれは、レスリー・モットラムの主審としてのキャリアが終わった瞬間でもあった。
50才のスコットランド人主審は試合終了後、静かにホイッスルを置いた。しかし彼は来年1月にまた日本に戻ってくる。今度は日本サッカー協会のチーフインストラクターとして新たに3年の契約を結んだのだ。
設立して9年を経たJリーグの審判技術向上の為、彼は約70人もの主審、副審、そしてレフリーインスペクターと共に働く事になる。モットラムはイエローカード、レッドカードを出す事について、いささかもためらわない事で有名だが、それは他の審判にとって色々な場面で良い手本となった筈である。
1994年のアメリカワールドカップ、そして1996年のイングランドで行われたヨーロッパ選手権で審判を務め同年、彼は日本にやってきた。彼が他の主審に比べて優れているのは選手が本当に負傷したのかどうか的確な判断を下せる事である。
Jリーグでは、選手達がファール欲しさにグズグズとピッチに倒れ込んでいるシーンによくお目にかかる。日本人の主審が選手達の芝居がかった仕草にプレーを止め、救護員をすぐピッチに呼び入れるのと対照的に、モットラムは毅然として彼らに立ち上がってプレーを続ける事を促す。そうすると、選手たちはバツが悪そうにしながらも芝居を続けるが、突然全速力で駆け出すのだ。
モットラムの今後の一大使命は、ダイビングがゲームに与える悪影響を認識させる事のみならず、こうした不愉快なプレーに対する対処法を日本人の審判に教えていく事だ。
「日本人の審判は僕なんかよりずっとルールには詳しいさ。ルールブックの一語一語しっかりね。」モットラムは言う。
「ただルールを知っている事と、それを実際に試合で適用する事は違う事なんだ。ルール通りに審判する事は難しいよ。時にはルールよりも自分の判断を優先する勇気も必要なんだ。」いついかなる時もゲームに対する感覚、サッカー精神に対する感覚、そして試合状況に対する感覚を持ち続ける事が主審として最も必要であると彼は言う。
「僕が思うに、日本人の審判が一番苦手としているのが選手達の扱い方だ。ただそれは一朝一夕には身につくものではない。徐々に身につけていくしかないんだよ。」
「ヨーロッパでは審判も選手達もまずお互いを知ろうとするんだ。けれども、日本人の選手にとっては週によってまた、主審によって判定が変わるようでは混乱するばかりなんだろうね。」 Jリーグで4度の年間優秀主審賞の受賞者であるモットラムにとって、今日の試合には審判の目を誤魔化して、手っ取り早くヒーローになろうとする選手があまりにも多すぎる。
「フェアプレー?」彼は言葉を続けて、「そんなものは国際サッカー連盟のフェアプレーフラッグにしかないのさ。プロの世界ではフェアプレーからかけ離れた行為は多いし、すぐにそういう状況が変わるとは思えないね。」
来月にもその状況を変えるべく日本での彼の新しい使命が始まる。
この記事へのコメントは終了しました。
コメント